子育てには苦労がつきもの。それは和牛にとっても同じことです。1頭でも多く優れた子牛を産出しなければならない母牛にとって子牛の世話は母体の消耗につながり、繁殖成績に大きく影響します。その苦労を省き、母牛が出産に専念できる環境をつくるため「和牛の超早期母子分離方式」が、和牛子牛生産者の間に徐々に広まりつつあります。

 この方式は、分娩(ぶんべん)から3~5日後に母牛と子牛を分離し、子牛には個別に人工乳を与え育成する方式です。メリットとして「母牛の分娩間隔の短縮」「下痢など子牛の疾病予防」などがあります。特に分娩間隔の短縮効果は大きく、従来の自然ほ乳では、子牛を生後4、5カ間は母親と一緒に飼い、年に1産を目標としていましたが、同方式導入後の生産者には約1・1産(分娩間隔329日)にまで改善した事例もあります。

 JAかみつが、上都賀地方農業振興協議会、県上都賀農業振興事務所は昨年3月、同方式のマニュアルを作成しました。「繁殖成績を良くしたい」「子牛の病気の発見が遅れがち」などの困りごとに有効ということで、先行農家の事例などを紹介しています。またJAかみつが和牛繁殖部(柏崎正雄部長・78人)は、既に導入している6人の生産者を中心に勉強会などを開き、組織を挙げて普及促進に努めています。

 同部副部長の山川芳衛さん(59)=日光市吉沢=は3年前から導入。子牛1頭ごとの柵や、人工乳などそれなりのコストがかかるため当初は戸惑いもあったそうですが「子牛の病気も減り、死亡割合も激減。近隣に迷惑をかける離乳時の鳴き声も気にならなくなりました」と笑みをこぼします。

 同じく副部長の細川康彦さん(53)=鹿沼市下沢=では昨年6月から、1日の飲む回数、分量を自動で管理できる「ほ乳ロボット」を導入し、効率よく飼養管理を行っています。「1頭1頭に目をかける時間も増え、成育のばらつきが減りました。市場の評価も上々です」。細川さんの農場では牛舎を拡張し、さらにスケールメリットを生かせる生産体制を整えるそうです。

 [写真説明]1頭1頭仕切られたカーフハッチ内の生後間もない子牛に人工乳を与える山川さん=日光市吉沢

 [写真説明]ほ乳ロボットで人工乳を飲む子牛=鹿沼市下沢の細川さんの農場