「俺も親父とアスパラガスやってみるよ…」。12年前に長男が言ってくれたその一言が決め手でした。JAなすのアスパラ部会長の佐藤憲一さん(59)は「新しい作物を始めるには覚悟が要ったし、少なからず迷いがありました。でも息子の言葉がうれしくてね…」と当時を振り返ります。

 その後、旧湯津上村を中心としたJAなすの管内のグリーンアスパラガス生産は、黒磯などにも広がり急成長。2000(平成12)年には「アスパラ部会」を発足させ、現在部員は68人、作付面積は32ヘクタール、昨年度の出荷量は約300トン、額にして約3億円を越え「那須の高原アスパラ」は県内ナンバー1となりました。

 アスパラガスを始めた当時の湯津上は、まだ米麦中心の地帯。園芸作物に対する認識は低いものでした。現在の副部会長・坂主正さん(60)らと、わずか2農家で細々と始めたそうです。それまで佐藤さんも、稲作とニラを生産していましたが、アスパラガスに作物を切り替えたところ周囲からは「何を始めたんだ?」などと揶揄(やゆ)されたこともあったそうです。

 県内のアスパラガス産地としては上三川、鹿沼、下野などが知られていますが、湯津上はいわば後発組。その急成長の陰には「たい肥利用協定」などの耕畜連携があります。甘く、軟らかいアスパラガス生産には、良質な土づくりが欠かせません。那須野が原は、全国有数の酪農地帯、土づくりに欠かせない良質なたい肥の入手が可能な“土壌”があったわけです。

 また同部会の元気な秘けつは「若さ」にもあります。部会長の長男・勝也さん(30)をはじめとして、20代、30代の生産者が約半数を占めているそうです。部会の活動として年に6回行われる講習会と現地検討会などにも積極的に参加し、生産技術の向上に励んでいます。視察に来る市場関係者からも「これからが楽しみですね」と期待されているそうです。

 今年度は約4億の出荷額を目指すという同部会。佐藤部会長は、「アスパラガスといえば『なすの』と覚えてもらえるよう頑張ります」と意欲を見せました。

 [写真説明]「アスパラガスといえば『なすの』と覚えてもらいたい」と話すJAなすの「アスパラ部会」の佐藤憲一部会長

 [写真説明]3月に行われた芽揃え会