2度目の挑戦となる高校卒業。その目標が崩れそうに思えた。
「本当に最悪 何のために生きているの」
定時制高校に通う宇都宮市の未来さん(20)=仮名=は、スマートフォンの通信アプリLINE(ライン)に書き込んだ。

2013年末の深夜。一人暮らしの借家は静まりかえっている。
やり場のない思いを、続けてはき出した。
「幸せを望んではいけないのかな…」
市内の医療関連施設で働いている。親には頼れない。
全日制の高校を中退し、1年半後の13年春、いまの高校に入り直した。前の学校の単位も認められ、1年で卒業できるはず。
支えてくれる職場の上司、同僚がいる。「自立して生きていくため、まず高校を卒業しようよ」
近くに住む祖父からも「いまが人生の正念場」と言われる。
「みんなの期待に応えたい」といつも考えてはいる。
それなのに…。
たびたび学校を休んでしまい出席日数は不足気味。
卒業できるの? 学校に問い合わせると、「年明けでないと何とも言えない」と告げられた。
登校しようとすると、おなかを壊したり、じんましんが出たり。原因は自分にも分からない。
仕事も休んでしまう。「出勤すれば、しっかり働けるのに…」。施設長の女性(68)は首をかしげる。
朝から入所者の食事介助や身の回りの世話をする。
午後は高校生になる。授業が終わるのは早くても夜8時すぎ、帰宅は深夜。疲れは抜けない。
「突発休」は給料に響き、1月は普段の半分の4万円ほどしか入らなかった。光熱費、携帯代…。支払いもままならない。
お風呂に湯を張らなければ、ガス代が月3千円浮く。節約が日常茶飯事だ。
自分で自分を追いこむかのような未来さんの姿。母子家庭支援に取り組み、未来さんを見守る氷室初音さん(47)の目には、こう映る。
「休むのは体の疲れというより、心が追いついていないのかもしれない」
氷室さんは、未来さんの子ども時代に思いをはせた。「耐えられないような境遇で生きてきたから」
◇ ◇ ◇
「目の前のことをやらなきゃ」。そんな思いとは裏腹に、未来さんの体が悲鳴を上げるようになったのは中学生の時。
両親が離婚し母、妹弟と暮らした。困窮する生活。
そのころから感じていた。
「自分は誰からも必要とされていないのかな」