
2013年末。県北に住む定時制高校3年、由衣さん(18)は昼と深夜のアルバイトを掛け持ちし、心身ともに追い詰められた。
学校にもバイトにも行けず、自宅に引きこもって数日。
「このままだと、卒業できなくなる」
家計を支え、進学費用をためたくて、がむしゃらに働き続けた。そして、学校に行く気力、体力まで奪われた。勉強が本業なのに。
深夜のバイトはやめた。
◇ ◇ ◇
定時制は4年課程。卒業まで1年余りとなった年明けの1月。
「大学か短大に進学して幼稚園の先生になりたい」。その夢をめぐって気持ちは大きく揺れている。
なかなかたまらないお金。
ひとり親の母は体調が優れず家にいる。高校に入った15歳から、少しでも条件のいいバイトを探しては働いてきた。だが高校生の時給は700円台ばかり。
昼間のバイトは人件費削減のためか、思うようにシフトに入れてもらえない。
働けば働くほど勉強する時間が削られるジレンマもある。
「正直、進学は厳しいと思う」。夢をあきらめそうになる自分がいる。
これからかかるのは学費だけではない。
いまは親類の車を借りているが、いずれは自分で買わなければならない。
2年後の成人式。振り袖のレンタル代を出してくれる人はいないだろう。
進学したとしても、幼稚園の先生として働き口に恵まれるとは限らない。不確実な将来にお金をつぎ込むより、目の前で必要に迫られる物にかけたい。そんな思いさえよぎる。
「自分で何とかしなければ」。学校に通い、自ら稼いだお金で車の運転免許を取ってまで働いた毎日。
「もう疲れちゃった」
◇ ◇ ◇
葛藤しながら、将来を現実的にたぐり寄せようと、もがいている。
新たな道も考え始めた。
母に代わって料理をして、その楽しさを知った。自宅から通える専門学校に入り栄養士になれないか。
進学できるなら、「昼間の学校がいい」と思う。いまの定時制高校にはない学校祭を、今度こそ経験したい。そういう「思い出」をつくれる学生生活を描く。
何としても、入学時の費用はためたい。どんな奨学金を借り学費を賄おうか。
進学が無理なら、就職して、通信講座で資格を取ろうか…。
「ずっと、どうしようか考えてる」。春、定時制の最終学年を迎える。
(文中仮名)