見つけて、支援する。
貧困の中にいる子どもをすくい上げるには、支援の「好循環」を生み出すことが鍵を握る。
切り札の一つが、子の衣食住や親までも支援できる「居場所」だ。
21日、土曜日の午後。日光市内の居場所「Your Placeひだまり」を訪ねた。

第3章で取り上げた佑樹君(15)=仮名。この春、県立高に入り、期末テストに向けて勉強をしていた。
かつて高校進学など、とても考えられない暮らしを強いられた。
生活保護を受給するひとり親の母親は家事が苦手だ。住まいは、まるでごみ屋敷。水道は止められ、トイレが使えないほど。佑樹君は食事をほぼ学校の給食に頼った。
それでも、母親は家の中に第三者を入れる支援をかたくなに拒んだ。
市内のNPO法人が「連れ出して支援する」とつくったのが、ひだまりだ。食事を出し、風呂に入れて、服の洗濯までする。
落ち着き、自尊心が芽生えた佑樹君。「料理人になる」。夢を口にするようになった。
◇ ◇ ◇
学校などは、子どもが過ごす時間が長い分、見つける最前線になる。
第4章で取材した高根沢町。ある小学校教諭は「学校は貧困などに気付いても家庭の問題には踏み込めない」。多忙な上、福祉の制度などのことはよく分からない。
町が活用しているのが、スクールソーシャルワーカー(SSW)だ。
県内のSSW研究会代表の土屋佳子さん(48)は「SSWは学校から情報を得て、家庭、福祉、地域とつなぐ橋渡し役」と強調する。
既に各市町にある要保護児童対策地域協議会の役割は大きい。市町関係課や児童相談所、警察、学校などが情報を持ち寄り、支援を考える場だ。
虐待を防ぐ観点で始まったが、日光市は、「虐待の予防にもなる」と考え、視野を「貧困状態にないか」にまで広げる。
その先に、ひだまりなどの支援が定着している。
支援に結びつくから、見つける、掘り起こす。
実はこれが、好循環の流れだ。
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県内の居場所、SSWはまだ限られ、拡充は急務。でも一朝一夕にはできない。
いち早く子どもの貧困対策に取り組んできた東京・荒川区。
子どものショートステイ、養育支援訪問…。対策に関係しそうな施策を洗い出すと、メニューの多くが既にあった。
重要なのは「視点」。
居場所がない足立区では、地域から募った協力者が養育の難しい家庭を訪ね子どもを支援する。
自治体ごとに支援の形は違ってもいいはずだ。
できることは、ある。