下野新聞は栃木県の地元紙として、宇都宮美術館の開館前から、同館の作品収集などの開館準備の様子を広く紹介してきました。また、1997年の開館以降も、その展覧会情報をいち早く誌面で取り上げ続けています。

 今回、同館で開催されている、開館25周年記念 全館コレクション展「これらの時間についての夢」展は、「時間」をテーマとしています。そこで、12月1日から15日まで、毎日1回ずつ、このページ内で、本誌の宇都宮美術館の記事を再度掲載し、同館の歩みを振り返ります。

 

これ夢展 担当学芸員の一言

宇都宮の現代彫刻を牽引した丑久保健一さんの個展の記事です。大谷の地下空間に魅せられ、その経験から作り出された《大谷考ー指を見つめる》が、現在展示されています。

下記は2004年10月10日に掲載された記事です。

 
地下空間と木で対峙きょうから丑久保健一展宇都宮美術館
 
 宇都宮・大谷の地下空間に魅せられ、自然と対峙(たいじ)し続けた彫刻家、故丑久保健一さんの回顧展が十日、宇都宮美術館で始まる。初期から晩年まで、代表作をほぼ網羅した百五点を展示。木に対する深い洞察、飽くなき創作意欲が作品全体を貫き、大きなスケール感に包み込まれる。十二月十二日まで。
 丑久保さんは、二〇〇二年秋、五十五歳で亡くなった。東京・木場の近くで生まれ育ち、大工の祖父の影響で木を彫り始めた。東京造形美術学校を卒業後、宇都宮市大谷町に住み、制作活動した。
 中学三年ころの処女作から、木を軟質に見せた一九七〇年代の「布団」、八〇年代の「木によるドローイング」を経て、九〇年代の「円筒」、「黒い作品」へ連関していく。二〇〇〇年からは黒と朱の「大谷考」シリーズとなった。
 重力が一つの大きなテーマだった。太平洋を舞台にした八七年の「1・0・∞のボール」で使われた百八個の木の球体は、それぞれ一部がひしゃげている。闇(やみ)も重要だった。黒い作品は地下空間で得た「墨汁の感覚」から生まれた。
 福島文靖学芸員は「大谷の空間と闇が師匠で、常に師を超えようとしていたのでは」と解説する。
 関連して、十六日までギャラリー・シエール(宇都宮市中央一丁目)、三十日まで板室観光ホテル大黒屋ロビー(黒磯市板室)で丑久保さんの作品展が行われている。
 (問)宇都宮美術館電話028・643・0100。