下野新聞は栃木県の地元紙として、宇都宮美術館の開館前から、同館の作品収集などの開館準備の様子を広く紹介してきました。また、1997年の開館以降も、その展覧会情報をいち早く紙面で取り上げ続けています。
今回、同館で開催されている、開館25周年記念 全館コレクション展「これらの時間についての夢」展は、「時間」をテーマとしています。そこで、12月1日から15日まで、毎日1回ずつ、このページ内で、本紙の宇都宮美術館の記事を再度掲載し、同館の歩みを振り返ります。
これ夢展 担当学芸員の一言
美術だけでない分野でも、当館の研究・収集・展示は、開館からずっと継続しています。2月からは建築に焦点をあてた「宇都宮美術館開館25周年記念 二つの教会をめぐる石の物語」を開催します。
下記は1998年12月6日に掲載された記事です。

「日本のライフ・スタイル50年ー生活とファッションの出会いから」展が来年一月十日まで、宇都宮美術館で開かれている。
同展には、一九五〇年代から九〇年代まで、それぞれの時代、生活を彩った衣服、生活用品、ポスターなどが展示されている。
会場に入ると、導入部分のショーケースに六七年生まれのリカちゃん人形がさまざまな衣装を着て並んでいる。ママやボーイフレンドもいる。ここは美術館だろうか、と戸惑う。今までの美術館ではなかった類の企画だ。
五〇年代の部屋には、昔懐かしい黒電話や手動ローラー付き洗濯機、白黒テレビなどが置かれている。六〇年代の部屋では、三島由紀夫事件、ジャズ・メッセンジャーズの来日など当時の出来事をスライドで映し出している。当時のジャズとロックのレコード・ジャケットも並んでいる。
七〇年代の部屋にはホンダ車「シビック」、「りぼん」「アンアン」「ポパイ」などの雑誌。八〇年代の部屋には「無印良品」。「おいしい生活」といった百貨店などのポスター。
見ていくと、時代感覚が伝わる象徴的な物は、意外に身近な物であることに気付く。「生活と美術」をテーマに掲げる同美術館が「美術館に収蔵されてきたような作品だけがアート、文化ではない」という主張を前面に打ち出している。
九〇年代の部屋には四百円で実際に使えるプリクラの機械があり、六十代の夫婦が現代の若者文化を初体験していたり、一味違う空間が広がっている。
午前九時三十分から午後五時。休館は月曜日と十二月二十八日から一月四日まで。入場料は一般六百円、高校・大学生四百円、小・中学生二百円。問い合わせは宇都宮美術館☎028・643・0100。