下野新聞は栃木県の地元紙として、宇都宮美術館の開館前から、同館の作品収集などの開館準備の様子を広く紹介してきました。また、1997年の開館以降も、その展覧会情報をいち早く紙面で取り上げ続けています。
今回、同館で開催されている、開館25周年記念 全館コレクション展「これらの時間についての夢」展は、「時間」をテーマとしています。そこで、12月1日から15日まで、毎日1回ずつ、このページ内で、本紙の宇都宮美術館の記事を再度掲載し、同館の歩みを振り返ります。
これ夢展 担当学芸員の一言
何かと話題になりやすい作品購入ですが、購入だけでなく、たくさんの寄贈によって当館のコレクションは成立しています。多くの個人、法人の方々に支えられて開館したことが分かる記事です。
下記は1997年2月14日に掲載された記事です。

開館彩る「夢」かなう
院展、日展の代表作/「百周年」祝う贈り物
宇都宮美術館への寄贈話が十三日に明らかになった作品は、いずれも大作ばかり。マグリットの作品は価格議論で話題となった「大家族」に次ぐ二作目、松本哲男氏の「グランドキャニオン」は院展総理大臣賞の受賞作で、「風」は日展出品の米陀寛氏の代表作。関係者は「購入額は公表できない」としているがいずれも高い評価を受けており、「百周年」を祝う金融機関や企業からの“プレゼント”が同美術館の開館に彩りを添える。
マグリットの「夢」を寄贈したのは大林不動産(東京都千代田区)。「大家族」の所有者でもあったベルギー人と交渉、昨年夏に購入し、十二月宇都宮市に寄贈を申し出た。
同社は十年ほど前、同市にある帝京大学理工学部の用地を提供。近くに住宅地を開発するなど市とかかわりが深い。同社の坪井比三之社長は「長い付き合いの中で、百周年という節目にご奉仕させていただいた。『何かお祝いを』という話に、絵が持ち上がった。団地の隣に美術館ができて付加価値が増す面もある」と話した。
「夢」は、昨年十二月に外部の専門家による収集委員会で「収集方針に合致する」との結論が出され、受け入れを決定した。
「グランドキャニオン」の寄贈主は足利銀行で、「風」は栃木銀行。どちらの作品も「現在活動中の地元出身作家」のジャンルとして市が収集を予定していたが、松本、米陀氏から各銀行が購入、役員会で議決し寄贈を申し出た。
足利の井上陽男総務部長は「作品を探していた市と、故郷に代表作を展示したいという松本先生の好意を当行が仲介した」と話している。市は近く二作品の正式な受け入れを決める。
松本氏は「自分の作品は他県に多く、この作品はぜひに県内に、と思っていた」と語り、米陀氏は「多くの人が何らかの感銘を受けてくれたら作家みょうりに尽きる」とコメントした。