下野新聞は栃木県の地元紙として、宇都宮美術館の開館前から、同館の作品収集などの開館準備の様子を広く紹介してきました。また、1997年の開館以降も、その展覧会情報をいち早く紙面で取り上げ続けています。
今回、同館で開催されている、開館25周年記念 全館コレクション展「これらの時間についての夢」展は、「時間」をテーマとしています。そこで、12月1日から15日まで、毎日1回ずつ、このページ内で、本紙の宇都宮美術館の記事を再度掲載し、同館の歩みを振り返ります。
これ夢展 担当学芸員の一言
オオタカが理由で、建設工事が遅れた美術館はおそらく世界唯一ではないでしょうか?現在も空を見上げると、その姿を見かけることがあります。寒い日が続きますが、文化の森公園での外遊びや散歩、そして、ご来館をお待ちしています。
下記掲載の記事は1995年7月13日のものです。

騒音抑え照明も暗く
宇都宮美術館の建設工事
オオタカ保護に苦心
休業補償など問題残る
「建設地周辺にオオタカが生息している」との情報によって、文化の森(仮称)宇都宮美術館の工事がストップしたのが今年一月二十四日。その後、工事は一部再開したが、市の担当者によると「オオタカの保護のために工事の中断や制限をするのは、全国でも初めてのケース」という。本格的な工事再開を前に、オオタカの子作りに配慮しながら行った工事現場を見た。
長岡町の工事現場を訪ねたのは五日。工事が予定通り行われていれば、既に本体工事は終了し、地上二階、地下一階の建物の外観は出来上がっていたはずだが、まだ鉄骨が組みあがったままの状態だ。
現場中央には、鉄骨を組む巨大クレーンが倒されている。稼働すれば、高さが三十㍍にもなるので、オオタカを驚かさないために使用中止になった。クレーンを動かす特殊オペレーターはほかの現場に移動している。
工事そのものも、全体の三分の二を占めるオオタカの巣に近い西側部分は、完全にストップ。風雨に鉄骨にはさびが浮き出ており、さながらゴーストタウンのようだ。
残りの三分の一で、工事は行われているが、生コンを送り込むコンクリート圧送車の周りに防音シートを張ったり、低騒音型重機の使用など、細心の注意を払っている。また、作業員の数も制限し、百人程度と通常の半分以下だ。
市は当初、平成八年一月末に美術館の建物を完成させ、同年秋にオープンさせる予定だった。オオタカの営巣に伴う工事の制限によって、約半年間ずれ込んでいる。
十四日に本格的な工事再開となるが、現場工事事務所長の枠谷学さん(五三)は「工事現場では、騒音を抑えるため、工事車両のスピード制限や、現場での業務放送の禁止、夜の照明もできるだけ暗くするため、水銀ではなくナトリウム灯を使うなど、だいぶ神経を使いました」と話している。
また、有馬宏年市文化の森公園推進室長はこれまでの経過を振り返って「降ってわいたような騒ぎで、まさか巣があるとは考えられなかった。植物のように動かないものは、保全の方法もあるが、オオタカのように動くものは、難しい」と話す。今後は、建設業者に対する休業補償などの問題も残されており“オオタカ騒動”は、市の開発行政に多くの教訓を残した。