遊水地で行われているヨシ刈り

 冬の柔らかな陽光が差し込む中、人の背丈以上に育ったヨシが次々と刈り取られていく。遊水地の冬の風物詩であるヨシ刈りの光景は、古き良き日本の原風景を思い起こさせる。

 ヨシは夏の強い日差しを遮るための「よしず」の材料となる。よしず作りを50年以上行う栃木市藤岡町部屋、松本八十二(まつもとやそじ)さん(82)方では3月まで刈り取り作業が続くという。

 よしずは遊水地周辺の代表的な地場産業だった。エアコンが普及する前、夏を涼しく過ごすために多くの家庭で使われ、1960年代ごろには数百軒の生産者がいたとされる。安価な中国産が出回り始めて減少し、現在は松本さんを含めて3軒ほどになった。

 近年は新型コロナウイルス禍での換気や夏の猛暑対策として、その性能が再評価されている。「今年のヨシは堅くて質が良い」と話す松本さん。夏には丈夫な国産よしずが出来上がる。