下野新聞社など全国の地方紙10社が実施した、節分に関する合同アンケートでは、多くの方から節分にまつわる思い出をお寄せ頂きました。(前後編の後編)

 記述欄を読むと、節分を、家族の姿とともに思い出す方が多いことに気付かされます。大田原市、会社員男性(51)は「おとなしい父が豹変(ひょうへん)し、大きな声で『鬼は外、福は内』と言ったときはびっくりしました」と答えました。

 他にも、豆まきで張り切るお父さんの姿を思い浮かべる人は少なくありませんでした。宇都宮市、主婦の女性(46)も、近所中にとどろくような父親のかけ声を思い出すそうです。「あのときは、気恥ずかしい気持ちもありましたが、実家を離れてからはその声が聞きたいような。懐かしく感じます」とつづってくださいました。

 お子さんの成長を感じる機会にもなっているようです。宇都宮市、地方公務員女性(59)は、息子さんが小学生のころは体調を崩しがちだったそうです。思い出深いのは、「豆まきでお願いできると知った息子が、私の健康を願ってくれたこと」。きっと何よりの福になったのだろうと思います。

 宇都宮市、主婦の女性(75)が思い出すのは、保育園での子どもの姿。「毎年、保育士が鬼になり豆まきをしてもらっていましたが、泣く子と泣かない子がいて、その様子がとてもかわいらしかったです」と寄せてくれました。

 節分で子ども心をくすぐるのは、年の数だけ豆を食べる風習。「年を重ねるごとに食べられる数が増えてうれしかった」「小さいころはもっと食べたくて姉がうらやましかった」という答えを多く見かけました。

 なぜ年の数だけなのか。「子どもたちが食べ過ぎないよう、そのような言い伝えにしたのでは」と推察するのは、佐野日本大学短期大教授で管理栄養士の藤田睦(ふじた・むつみ)さんです。言い伝え通りならご長寿の方ほど多く食べられることになりますが、注意が必要。一概には言えないそうですが、高齢者は年の数だけ食べると食べ過ぎになってしまう場合もあるそうです。

 せっかくなので、藤田さんに豆の栄養価についても聞いてみました。大豆はタンパク質やカルシウムが豊富で、脂質が低いことが特徴。対して、落花生は、エネルギーや脂質が高いそうです。100グラム当たりのエネルギーは、大豆が372キロカロリー、落花生が772キロカロリー。ダイエットや生活習慣の改善に取り組んでいる方は、参考にしていただければ。

 大豆を使った郷土料理「しもつかれ」も栄養価が高いですが、「きらい」「箸も付けなかった」という答えが複数寄せられました。大豆をおいしく食べる節分の味は、しもつかれだけではありません。藤田さんによると、県南西部では節分の福豆と茶葉で入れる「福茶」を飲む文化があるそうです。ユズのみそ漬けをお供にすれば、いっそう深い味わいが楽しめるそうです。