地域防災力の底上げには、災害の知識や防災・減災のスキルを身に付け、地域住民をリードする「防災士」が欠かせない。1日、宇都宮市内で開かれた宇都宮大地域デザインセンターの「地域防災シンポジウム2023」を基に、県内の防災士の現状と課題、実践事例を紹介する。

 「災害に負けないまち」を目指して2020年春、小山市市民活動センターと同市社会福祉協議会、ボランティア団体YAMBEによって災害支援ネットワーク「おやま防災」が生まれた。

市民を中心に地元の災害支援に取り組むことを目指す「おやま防災」のメンバー
市民を中心に地元の災害支援に取り組むことを目指す「おやま防災」のメンバー

 発足には市内で2度発生した水害が深く関係する。2015年の関東東北豪雨では市内1525棟が床上・床下浸水に見舞われ、同市で初めて災害ボランティアセンターが開設された。支援件数は358件で、市内外から延べ1216人が支援活動に当たった。

 4年後の台風19号でも531棟の浸水被害があり、関東東北豪雨での経験を生かして地域主体でセンターの運営、資機材調達などに取り組んだ。一方で、市市民活動センターの宮岸誠(みやぎしまこと)センター長は「広域災害が発生すると市外から支援が見込めず、市内でも被災していることを知らない市民が多いことを身をもって体感した」と振り返る。

 同団体は毎月1回、ミーティングを開いてイベントや講座を企画し、X(旧ツイッター)やフェイスブックといった交流サイト(SNS)で定期的に情報を投稿。22年から白鴎大の防災サークル「め組白鴎」も参加し、イベント運営など活動を支えている。

 7月に野木町でダウンバーストが発生した際、ボランティアに参加するなど市外にも活動を広げている。市社会福祉協議会の田村秀徳(たむらひでのり)さんは「非常時のために、普段から声を掛けられる緩いつながりを築いておくことが必要。幅広い世代の市民が、活動できる時に参加できる場を提供していきたい」と話している。