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沿道に向かって笑顔で手を振る営業運転一番列車(宇都宮駅東口発)の乗客たち=26日午後3時5分、宇都宮市東宿郷6丁目

 次世代型路面電車(LRT)の宇都宮芳賀ライトレール線の営業運転が始まった26日。全国初の全線新設路線の開業という歴史的な瞬間に立ち会おうと、多くの県民や全国の鉄道ファンが集結した。乗客は新しい車窓から見える風景を楽しみ、沿線住民は横断幕や楽器演奏で歓迎。関係者は感慨を胸に乗客や観衆の対応に追われ、活気づいた。「雷都」をイメージした黄色と黒色の車両「ライトライン」が、街の誇りと未来への期待を乗せて走り出した。

 LRT開業初日の26日、JR宇都宮駅東口の停留場付近では、乗車するための整理券を求めて長蛇の列ができた。県内外から駆けつけた鉄道ファンや親子連れらを乗せ、営業運転の一番列車は午後3時に出発。「市民として誇らしい」「乗り心地が良かった」など乗客は興奮した様子で歴史的な一日を胸に刻み込んだ。

 整理券を求めて前日から鉄道ファンらが集まり始め、50人以上が待機列で夜を明かした。東京方面からの在来線と新幹線の始発が早朝、JR宇都宮駅に到着すると人がどっと増えた。小走りに列へ並ぶ人もいた。

 北海道や京都、長崎など遠方からの人も多く、整理券配布が始まった午前8時には550人超が行列。用意されていた一番列車から10本分、計1200枚は2時間足らずでなくなった。

 集まった人々からの拍手に見送られ、一番列車は同停留場を出発した。車内は混雑したものの、和やかな雰囲気。沿道には「祝開通」と書かれた手作りの横断幕を掲げる子どもの姿なども見られ、乗客は車窓の風景を撮影したり車外に手を振ったりして楽しんだ。

 宇都宮市鶴田町、小学6年山川司(やまかわつかさ)君(12)は父康夫(やすお)さん(53)と徹夜で並んだ。「地元なので、絶対に一番列車に乗りたかった。市民として誇らしい気持ちになった」と話した。

 勤務先が芳賀町内にある同市峰4丁目、小林健太(こばやしけんた)さん(38)は、6カ月の次女玲美(れみ)ちゃんと整理券を受け取った。「走りがなめらかで快適。渋滞の影響もないので通勤に使える」と好感触だった。

 岡山市東区、磯谷禎浩(いそたによしひろ)さん(63)、康恵(やすえ)さん(60)夫妻は「乗り心地が良かった。他の都市のモデルになってほしい」と満足げ。宇都宮市出身の長崎県長与町、会社員田中哲哉(たなかてつや)さん(47)は「記念の日をこの目で見たかった。長崎市も中心部は路面電車があって便利。車社会から転換するきっかけになればいいと思う」と期待した。

 夕方になっても乗客は途切れず、午後5時時点でも同停留場には約200人の列ができていた。