被災した宿を再建する最中、土石流に襲われた「ホテル海楽荘」。
被災した宿を再建する最中、土石流に襲われた「ホテル海楽荘」。
夫の幸雄さんを失った真里子さんは「今でもお父さんが帰ってくるような気がする」と話した
=9月29日午前10時50分、石川県珠洲市真浦町

 石川県能登半島を襲った記録的豪雨。発生1週間に合わせ、復旧を支援する本県ボランティアらの活動や甚大な被害を受けた住民の思いを伝えようと、本紙記者は9月27~30日、輪島、珠洲両市で取材した。

 震災後、本県などからのボランティアの拠点だった珠洲市の「ホテル海楽荘」では、再建への思い半ばに経営者の池田幸雄(いけだゆきお)さん(70)が濁流にのまれた。妻真理子(まりこ)さん(69)は「何日も見つけてもらえず、寒かっただろう」と涙した。

 浸水被害に遭った輪島市の仮設住宅の入居者(75)は「踏んだり蹴ったり」と憤り、泥水や流木が流れ込んだ田んぼで稲刈りしていた男性は「祈っても意味がなかった。2度もこんな目に遭うなんて」と嘆いた。

 相次ぐ災害に疲弊し苦しむ住民。「能登を忘れないでほしい」。その言葉を胸にレンズを向けた。

「誰も助けに来てくれなかった」。孤立した海楽荘周辺で4日間、夫を探し続けたことを振り返る真里子さん
「誰も助けに来てくれなかった」。孤立した海楽荘周辺で4日間、夫を探し続けたことを振り返る真里子さん
=9月29日午前10時25分、石川県珠洲市真浦町
仮設住宅も床上浸水し、家財道具が敷地に積み上げられた。
仮設住宅も床上浸水し、家財道具が敷地に積み上げられた。
復旧のため住民は一時退去を余儀なくされている=9月27日午後3時50分、石川県輪島市宅田町
「少しでも力になれれば」と床上浸水した家屋から泥をかき出す本県ボランティアら
「少しでも力になれれば」と床上浸水した家屋から泥をかき出す本県ボランティアら
=9月28日午前11時35分、石川県輪島市町野町

(磯真奈美)

【能登豪雨ルポ】大雨で変わり果てた震災被災地、疲弊する住民 ボランティアが応援

 家々をのみ込んだ土砂、橋に堆積した流木など、随所に爪痕が残る。能登半島北部を襲った記録的大雨から1週間超。記者は9月29日、川の氾濫などで甚大な被害を受けた石川県輪島市町野町を訪れた。地震と豪雨。同じ年に2度も大災害に見舞われた。「ここで暮らしていけるのか」。住民は途方に暮れる。疲弊する被災地を何とか支えようと、本県などから多くのボランティアが駆け付け、復旧作業に当たる姿があった。

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【能登豪雨ルポ】「これからという時に…」宿主と突然の別れ ボランティアを支えた拠点・珠洲のホテル海楽荘

 石川県能登地方の記録的豪雨で、土砂崩れに襲われ宿主が亡くなった珠洲市真浦町の「ホテル海楽荘」。元日の震災後、ボランティア団体や復旧工事関係者を宿泊先として受け入れ、復興の拠点としてなくてはならない存在だった。宿を利用していた認定NPO法人「とちぎボランティアネットワーク(とちぎVネット)」の理事長や東京都内のボランティア団体が9月29日、被災した海楽荘を訪れ、亡くなった池田幸雄(いけだゆきお)さん(70)の妻真里子(まりこ)さん(68)とともに突然の別れを惜しんだ。悲しみの一方、被災地支援への思いを強くした。

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