地域防災力の底上げを目指して、宇都宮大地域デザインセンターと協働で1年間連載してきた「みんなでつくる とちぎ防災」。県内で起こりうる災害のリスクと、同大の取り組みについて改めて報告する。

 2022年12月に設立した同大地域デザインセンター地域防災部門は、関係団体と連携しながら学生や防災士のスキルアップのための教育プログラムの開発や、コミュニティー形成を目指している。近藤伸也(こんどうしんや)准教授(防災マネジメント)の研究室は、県内の防災士・防災関連の催しの実態を把握するため、県内の自治体で行われている防災研修の内容と、防災士が学びたい知識・スキルに関する二つの調査を行った。

 県と協働で行った調査では、県内25市町で行われた防災講座や研修の内容を分析。風水害や土砂災害等への備えや、被害想定・ハザードマップに関する内容が多く、地震災害に関する知識や災害情報の活用についても興味関心が高いことがうかがえた。

 一方、地元に住む防災士と防災士養成研修講座の受講者を対象にアンケートを実施。NPO法人日本防災士機構が発行する「防災士教本」に掲載されている約20項目のうち、防災士として活動するために必要だと感じている知識やスキル、地域住民に学んでほしい知識、地域から求められている内容について調べた。

 防災士として活動するために学ぶべき内容について聞いたところ、風水害や土砂災害、地震災害に関する学習意欲が高かった。地域住民に学んでほしい内容や地域から講話・研修で求められている内容についても同様の傾向が見られ、近藤准教授は「東日本大震災や2015年の関東東北豪雨、19年の台風19号といった過去に被災経験がある災害への意識が強いようだ」と分析する。

 防災士に期待される活動や訓練に関する内容や、「自助」「共助」を意識した地域づくりにも関心が寄せられた。市民にはなじみの薄い行政の災害対応や、企業・団体の事業継続については、防災士、地域とも関心が低い様子がうかがえた。

防災士や関係者が参加した意見交換会=2023年9月、宇都宮大
防災士や関係者が参加した意見交換会=2023年9月、宇都宮大

 近藤准教授は、防災士が学びたい内容と地域住民が学んでほしい内容、地域から求めている防災知識やスキルは比較的近いと分析した。「防災に関する知識を住民に伝えていくのが防災士の役割。より専門的な知識を習得すると同時に、地域で活動できる仕組みづくりが必要」と指摘。ワークショップや体験型講座、防災士の活動を活性化するための研修の実施を促すべきだと提言した。