下野新聞「あなた発 とちぎの特命取材班」(あなとち)など読者とつながる報道に取り組む全国20の地方紙による2024年の合同アンケートで、今後の原発政策のあり方について聞いた。選択肢は21~23年の3年間と同じで、23年までは物価高などを背景に原発活用を容認する回答が増えていたが、減少に転じた。東京電力福島第1原発の処理水の海洋放出後、福島産品を購入することについて聞くと「気にしない」との声が多かった。
24年は「積極的に廃炉とし、脱原発を急ぐべきだ」が最多の31・6%で、「すぐにでも全国的に廃炉とすべきだ」を加えた「脱原発」層は計44・1%。一方、「運転延長は控え、基数を減らしながら活用」を含む原発活用を容認する回答は計48・0%だった。
栃木県では、「脱原発」層は37・3%、「活用容認」は56・8%と、全体よりも容認派が多い結果となった。
参考値として、全体の値を前年と比べると、脱原発は8・4ポイント増え、容認は8・6ポイント減った。
23年はロシアのウクライナ侵攻などに伴うエネルギー価格の高騰を背景に、原発容認が増加した。24年は1月に能登半島地震が発生。今回のアンケートでは福島第1原発事故を想起したという声が少なくなく、脱原発の意見が増えた一因とみられる。
「分からない」はこれまでで最多の7・9%。栃木県では5・9%だった。原発を取り巻く環境がめまぐるしく変化し、活用の是非について結論を出しづらくなっている傾向もにじんだ。

昨夏に始まった福島第1原発の処理水の海洋放出に関連し、福島県の1次産品購入についても質問した。「あまり気にならない」「全く気にならない」の合計が51・2%で半数を超え、「とても気になる」「少し気になる」を合わせた33・5%を上回った。
栃木県では、「あまり気にならない」「全く気にならない」の合計が62・1%で、全体を10ポイント以上上回った。「とても気になる」「少し気になる」の合計は23・7%。
ただ、地元福島県では「気にならない」の合計が69・0%に達した一方、西日本では4~5割台が目立つなど、地域差がみられた。海洋放出の前に実施した昨年のアンケートでは、放出への賛否は反対が賛成を少し上回り、ほぼ拮抗(きっこう)していた。

アンケートは各紙が2月、LINEや紙面などで呼びかけ、47都道府県と海外から計4681件の回答があった。
明治大の勝田忠広教授(原子力政策)の話
本来は長期的な一貫性が必要な原子力政策で、エネルギー価格の高騰や事故への不安で国民は振り回されている。それは政府が十分な説明を怠ってきた結果ではないか。民主党政権時代、原子力政策について国民に聞く意見聴取会が各地であったが、そのような取り組みを続けないと民意がぶれやすくなるのは避けられない。福島原発の処理水でも「気にならない」が多かったが、問題があれば一気に懸念は増すはずで、原発政策と同様に民意は不安定な状態のままだろう。
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アンケートは以下の20紙が参加しました。 岩手日報、河北新報、秋田魁新報、福島民報、福島民友新聞、下野新聞、新潟日報、北陸中日新聞、福井新聞、信濃毎日新聞、静岡新聞、中日新聞、京都新聞、愛媛新聞、高知新聞、西日本新聞、熊本日日新聞、南日本新聞、琉球新報、日本農業新聞