1月に発生した能登半島地震の被災地では、避難生活の長期化によって心身の健康を損い、命を落とす「災害関連死」が懸念されている。避難所の衛生環境を整え、被災者の心身の健康を守るためにはどのような取り組みが必要なのか考える。

 能登半島地震や阪神淡路大震災、東日本大震災など災害時にはトイレ問題が取り上げられた。災害時のトイレ事情に詳しいNPO法人県防災士会理事の中川享子(なかがわきょうこ)さんは「避難生活でトイレは自分一人になれる唯一の場所にもなる。感染症や関連死のリスクはもちろん、心身の健康にもつながるものとして対策を進めてほしい」と強調する。

 中川さんによると、排せつのタイミングや回数は個人で異なり、我慢が難しい。排せつを少なくしようと水分や食事を制限し、体を動かさないようにすると、エコノミー症候群や心筋梗塞、脳梗塞など体調不良を引き起こす可能性や、震災関連死につながるケースもある。水道が使えず排せつ物がたまると、トイレや周辺の衛生環境が悪化し、感染症が拡大するリスクもある。

防災セミナーで簡易トイレの使い方を説明する中川さん(左)
防災セミナーで簡易トイレの使い方を説明する中川さん(左)

 断水時でも使える設備として(1)凝固剤で排せつ物を固める「携帯トイレ」(2)ベンチなどの形で持ち運びができる「簡易トイレ」(3)平常時に工事現場やイベント会場で使われる「仮設トイレ」(4)下水道管とつなげた専用マンホールに設置する「マンホールトイレ」-などがある。

 能登半島地震の被災地は交通網が寸断され、トイレを届けるのに時間がかかった。中川さんは避難所のトイレ状況を把握し、対応を進める行政担当者は必要として「交通網のまひなどを見越し、普段から数種類のトイレを備えておくべきだ」と指摘している。