刺激を受けると、くさい臭いを出すカメムシ。秋になると、越冬する場所を探し求めて家屋の窓の隙間から入り込む。福井新聞の調査報道「ふくい特報班」(通称・ふく特)に「こんなに多く見かけるのは今までになかった」との投稿が寄せられている。専門家は、春から夏にかけての天候が良かったため多く繁殖した可能性を指摘している。
駆除してもすぐ…
投稿者以外にも大量発生を指摘する声は多い。福井県越前市の50代男性会社員は「10月後半ごろから、『へくさんぼ』(カメムシ)が家の中にうじゃうじゃいる。10匹駆除しても数時間後にまた10匹現れるほど」。同市の美容室のオーナーも「店内で見かけたのは初めて」と驚く。
県内では今年、カメムシが大量発生しているのか。昆虫に詳しい福井市自然史博物館の梅村信哉学芸員(44)は「(生息数の)調査をしているわけではないのでなんとも言えない」。ただ、家屋に侵入する代表格のクサギカメムシは「成虫が越冬し、春に卵を産む。ふ化した幼虫が夏に成長し、秋に成虫になる」といい「今年の夏は雨が少なかった。幼虫が雨で死なず、うまく繁殖した可能性はあるかもしれない」と予測する。
好天あだで餌豊富か
また幼虫はスギの実(球果(きゅうか))を餌にして成長するため「球果が豊富にあって繁殖したことも考えられる」と指摘する。県総合グリーンセンター(坂井市)の担当者は、球果量の調査・研究を実施していないものの「今年は天候も良く、花粉の飛散も多かった」と球果量が増えた可能性はあるとする。
梅村さんによると、クサギカメムシのほか、丸っこい形のマルカメムシが家の中で越冬するという。
稲作の斑点米の原因となるホソヘリカメムシなどについては、県農業試験場(福井市)によると発生量は平年並みだったそう。担当者は「被害も多くはなかった」と話している。
家屋侵入防ぐにはサッシに殺虫剤を 駆除は瞬間冷却タイプで
カメムシの家屋侵入を防ぐ方法はないか専門家に聞いてみた。
県内の害獣・害虫駆除業者でつくる県ペストコントロール協会の八田真毅会長(56)によると、サッシの上下左右の溝部分などに殺虫剤を噴霧しておくと「カメムシが忌避する」という。殺虫剤は「市販のゴキブリ駆除などに使われるものでいい」。ただ効果が持続するのは1~2週間ほどで、定期的に行う必要があるそうだ。
また「普段閉めっぱなしのサッシなどを開け、チェックするのも大切」とアドバイス。閉め切ったままで侵入に気づかないと、春先に動き出して部屋の中まで入ってくることもあるそうで、その対策として定期的に開け閉めを繰り返しておくのがいいという。
見つけたときに駆除する際の注意点として「通常の殺虫剤では呼吸器官を閉じて薬剤をなかなか吸い込まないから、5分くらい噴霧し続けないと駆除できない」。このため、瞬間冷却して駆除するタイプの「冷凍殺虫剤がおすすめ」とのこと。(福井新聞)