強い勢力のまま本県に直撃し、県内全域で甚大な被害を及ぼした台風19号から4年が経過した。先月には宇都宮市や真岡市、さくら市、益子町、芳賀町、塩谷町付近で激しい大雨が降り、床下浸水などの被害があった。災害の教訓を生かすため、台風19号の被災者に当時の様子を振り返ってもらった。

 

 台風19号で、宇都宮市中心部を流れる田川が越水。JR宇都宮駅前や東地区は一時、道路に冠水して一帯に水があふれた。

桜井佳奈さん(左)と田中佳代さん

 田川に近い地域に住む田中佳代(たなかかよ)さんと桜井佳奈(さくらいかな)さんは、子どもたちが同級生の「ママ友」だ。当時、小学校の秋休み中で、桜井さんは実家の山形県に帰省しており、田中さんは雨や自宅周辺の様子を桜井さんに連絡していた。

 夜になると自宅前の道路に水がたまり、桜井さん宅はポストやガレージが水で見えなくなってきた。午後8時ごろ、田中さん宅の玄関に水が入ってきたため慌てて2階に荷物を運ぼうとしたが、トイレや浴室からもどんどん水があふれた。どうしても必要な物以外は諦めて、2階に避難することに決めた。

 子どもたちを隣に住む祖父母に預けていたが、停電で子どもたちの様子がうかがえない。窓から勢いよく流れる川の水が見え、恐怖を感じながら一夜を明かした。

 一方、桜井さんはライブカメラで田川の水位を確認していたが、アクセスが集中したためか映像が見られなくなった。自宅の様子は田中さんからの情報に頼るしかなく「どうなっているのか分からない」と不安を募らせた。

床上浸水により家具や日用品が泥に浸かった田中さん宅

 翌朝に水は引いたが、屋内に入り込んだ水で家具が浮かび上がり、日用品があちこちに散乱し泥だらけになっていた。桜井さんは自宅に戻ってきたが、1階にあった洋服や子どもの学用品、おもちゃのほとんどが水を吸って使えなくなってしまい、がくぜんとした。

 数日後に小学校が再開するため必要な物をそろえなくてはいけないが、自宅の片付けに追われ、買い出しに行く暇もない。途方に暮れていると、友人たちがお下がりのランドセルや数日分の着替えを届けてくれた。桜井さんは「自宅の片付けを手伝ってくれたり、必要な物資を貸してくれたりと友人たちの支えに救われた」と振り返る。

 自宅と地域の片付けを進める一方、市への届け出も済ませなければならない。ごみや泥はどのように処分すればいいのか、罹災(りさい)証明はどこで手続きを取ればよいのか…。田中さんは初めてのことばかりで戸惑った。「地域のお年寄りはインターネットで情報を集めたり、何度も市役所に行ったりできない。市役所から必要な書類を集めて共有してくれる人もいた。炊き出しはみんなで情報を交換し合い、地域の関わりの大切さを痛感した」と語る。

泥だらけになったランドセル。友人の支援を得て学校再開までに代用品を手に入れた

 桜井さんの自宅が一部損壊と判断されたことについて「被害状況は同じ床上浸水なのに、自宅に入り込んだ水の高さによって、半壊か一部損壊か判断が分かれた。保険の保障額にも差が出るので、もやもやが残った」と嘆く。

 2人は今年6月、東小の授業参観で、水害体験を児童や保護者に紹介した。桜井さんは「まさか自分たちの住む場所が浸水するとは思っていなかった。誰にでも起こりうることと考え、もし水害が起こったらどう動くか考えて備えてほしい」と強調した。

◆メモ 2019年10月、本県に台風19号が直撃し、宇都宮市や栃木市など県内14市町に大雨特別警報が発表された。日降水量は宇都宮市、鹿沼市、佐野市などで観測史上最大を記録。河川の氾濫などにより床上、床下浸水など住宅被害は1万4千棟以上となった。鉄道橋が破損したJR両毛線は1カ月にわたって一部区間で運転を見合わせ、市民生活に大きな影響を及ぼした。