ラムサール条約湿地の渡良瀬遊水地。三日月の下を数羽の水鳥が舞った

 9月中旬の渡良瀬遊水地。赤く染まる空に三日月が顔を出し始めたころ、数羽の水鳥がヨシ原の上空を飛び交った。

 本県と群馬、埼玉、茨城の4県にまたがる日本最大級の遊水地。2012年には国際的な湿地の保全を目的としたラムサール条約湿地に登録された。

 約3300ヘクタールの広大な敷地は貴重な動植物の宝庫だ。栃木市渡良瀬遊水地課によると、絶滅危惧種を含む植物約千種、鳥類約260種が確認されている。近年は湿地生態系ピラミッドの頂点に立つコウノトリが定着した。

 足尾鉱毒事件に伴う谷中村強制廃村の歴史を今に伝える史跡ゾーンも残る。熱気球、自転車、ウオータースポーツなどの一大拠点の顔も持つ。同課の担当者は「自然観察やアクティビティなど活用法はさまざま。人間と自然がうまく共存する場所です」と話す。

   ◇    ◇   

 自然、治水、レジャーなど、多様な側面を持つ渡良瀬遊水地。息づく自然や人々の営みを写真で追う。