福岡市・天神にある警固公園の喫煙所

福岡市・天神にある警固公園の喫煙所

 憩いの場として親しまれる福岡市・天神の警固公園。喫煙所があり愛煙者にとってもオアシス的な空間だが、西日本新聞「あなたの特命取材班」には「吸い殻のポイ捨てが多く困っている」という投稿が時折寄せられる。一方、アンケートを実施すると、非喫煙者からも公園の喫煙所は「必要」という声が少なくない。都心の喫煙事情を調査した。

 2012年の公園再整備で設置されたが、13年11月に受動喫煙の懸念を受け撤去。すると、ポイ捨てが増えて3カ月後に喫煙所が復活。19年12月、現在の場所に移設された。

 アンケートは、西日本新聞meのウェブサイトで6月末から7月中旬にかけ実施し、283人が回答。警固公園に喫煙所は「必要」と答えた人は185人だった。喫煙者(124人)はほぼ全員で、非喫煙者も「必要」は4割に上った。

 理由で最多だったのが「喫煙所を設置することでマナー向上につながる」。一方「不要」と考える人の多くは、公共の場所である公園に喫煙所があることへの抵抗感を挙げた。

兵庫県は条例で禁煙

 兵庫県は20年、都市公園を原則禁煙とする条例を施行。これを受け、神戸市は「市が管理している都市公園では全面禁煙で、喫煙所は設置していない」(担当者)という。

 一方、福岡県では同様の条例はなく、健康増進法に沿った対応となる。同法では、公園は屋外のため禁煙対象施設とはならず、課されるのは受動喫煙への配慮義務。福岡市は「公園は自由利用が原則で、神戸市以外の政令市で、完全な禁煙措置をしているところはない」と説明。「吸う人も吸わない人も、気持ちよく公園を使える環境づくりに引き続き努める」と話す。

 アンケートでは天神エリアの喫煙所の数をどう思うかについても聞いた。喫煙者も非喫煙者も「多い」よりも「少ない」と回答した人が多かった。

 本紙は17年、西鉄福岡(天神)駅中央改札口から半径約300メートル以内を調査したことがある。誰でも立ち入り可能な喫煙所は20カ所に上った(飲食店やパチンコ店、コンビニは除く。同じ建物内に数施設ある場合は1カ所と計算)。

 今年7月、17年の結果を基にあらためて調べると、当時あった喫煙所は9カ所に減っていた。ただ、21年に開業した天神ビジネスセンターには喫煙所があり、再開発による一時的な現象の可能性もある。

撤去店「掃除大変」

 一方で、コンビニを調べると、路面店9店のすべてで灰皿はなし。2店舗はここ5年間に撤去したと説明。撤去したコンビニの店員は「吸う人が多くて掃除が大変だった」と明かす。

 福岡市は03年、天神地区などで歩きたばこを禁止する条例を施行。調査エリア内に3店舗があるファミリーマート(東京)の広報担当者は「18年から、各自治体の路上喫煙に関する条例を目安に(店舗での灰皿設置を)運用している」と説明した。

 アンケートや取材を通して、喫煙者と非喫煙者の双方から多く上がったのが、喫煙マナーの向上を求める声だ。

 取材中、警固公園にある喫煙所外の花壇の脇に座って喫煙していた70代の男性は、「喫煙していると嫌な目で見られて肩身が狭い」と言いながら、吸い殻を地面にポイ。喫煙者のこのような対応は、誰にとってもマナー違反。喫煙者でも不快に思う人がほとんどだろう。

 他の人はどう感じるのか-。それに思いをめぐらせ、喫煙のマナー違反をなくすことが、「みんなに気持ちいい」公園を作る一歩なのかもしれない。(西日本新聞)

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