夏の初め、私たち大学生は気が重い。実はこの時期、夏休みを目前に次々に期末レポートを課されるのだ。どうにか課題を楽しくできないかなぁ。そうだ! おしゃれな図書館で気分を上げながら取り組んじゃおう。今回はネットで見かけたおしゃれ図書館巡りの散歩に出発!(松島翠(まつしまみどり)、諏訪千咲(すわちさき)、竹居あいみ(たけいあいみ)、小林菜々子(こばやしななこ))

 

■本の迷路 遊び心満載 もみじ図書館(宇都宮)

 ここは、しゃれた隠れ家か? 最初の散歩先は宇都宮にある「もみじ図書館」。アパートの1階を改造してできた民間の図書館だ。

 入ってまず目を見張るのが、迷路のような並びの本棚。くぐったりのぞいたりする造りは、遊び心満載だ。通路がなく四方を本棚にぐるりと囲まれた空間は、個室のように落ち着いて過ごせる。「うわっ、床から頭上まで本が積み上げてある」と一瞬思ったのは、なんと柱。足場板という材をわざわざ重ねてビス止めして造ったそう。キッチンやテラス、音楽機材もあって、ここって本当に図書館なの?

「カトレア荘」というアパートの1階に、何気なく図書館が!

 しかも約7千冊ある本は、全て持ち出し禁止だ。この場所、この空間でしか読めないというのも魅力的。無人で開館しているけれど、一度も本を盗まれたことはないという。

 子供だけが入りやすい低い入り口のスペースには、絵本や童話を並べるなど本の配置にも工夫がある。「雑多でいろんな種類の本があるから、探す楽しみがある。ドンキと同じ」と、利用客のご夫婦も楽しそうだ。

 運営者のビルススタジオに連絡すれば、キッチンで料理を振る舞うことも、テラスでお花見やランチをすることもできる。地域の人々が将棋教室や編み物サークル、カフェなどを開き、自由な交流の場にもなっている。「街の共用部をつくりたい」という思いがかなえられていて“いいね”!

 ▼もみじ図書館 午前10時~午後7時、日曜、祝日、第2・4土曜休館、東武宇都宮駅から徒歩9分(本の貸し出し不可)。

 

■音楽流れ 会話もOK 那須塩原市図書館「みるる」

 おととしのグッドデザイン賞に輝いたのは、那須塩原市図書館「みるる」。この愛称は、なんと採用当時、小学生の子が発案した。図書館が“見”るる、近くの交流センターが“来”るる、合わせて「みるく」。生乳生産額が本州1位の那須塩原市にぴったりだ。

駅前にそびえ立つ壮大な「みるる」

 開かれた交流の場所というイメージを意識したら、おしゃれになったというガラス張りの外観。1階に入っていくと、あれ、音楽が聞こえる。図書館なのに? みるるは要予約のサイレント・ラーニングスペース以外、利用者の交流を促すためにおしゃべりOKでBGMも流しているのだ。シーンとしないから、図書館によくある「新聞をめくる音がうるさい」という声が逆に一件もないという。カフェ近くのエリアは食事もOKで、ますます交流が深められそうだ。

 そんな図書館にある日、1人の小学生から手紙が届いた。「コロナで旅行や外に行けないけど、みるるに来ると旅行した気分になれます。将来は、みるるで働きたいです」。職員の物井友和(ものいともかず)さんは「開館までの疲れを忘れさせてもらった」という。涙した職員もいたそうだ。

 年間100回以上の企画が催されるみるるは、この夏もイベント盛りだくさん! 小学生向け「ふしぎ発見シリーズ」の今年のテーマは「南極」だ。実際に南極基地で仕事をしていた人の話を聞くことができる。これで自由研究もばっちりで“いいね”!

 ▼那須塩原市図書館「みるる」 午前10時~午後9時(土日祝は6時)月曜休館(祝日の時は翌日)、JR黒磯駅から徒歩1分。那須塩原市及び近隣の方に貸し出し可。

 

■木の温もりに「ホッ」 ふみの森もてぎ

 次は街なかの森にお散歩だ。豊かな町有林の資源を利用した茂木町の木造複合文化施設「ふみの森もてぎ」。どの位置からでも「木視率」(木肌が見える割合)を全て6割にしてリラックス効果が得られる設計で、確かに入った瞬間、木の温もりが感じられる。温かな黄色の照明、楽しそうな子どもの声。なんだか、ホッとする。

 天井は細く短い木がアーチ状につながって、大きな屋根を支えている。柱はないが、耐震性はあるとのこと。有名建築士に頼まなくても、高価な巨木を使わなくても「市販の木材でも作れるんですよ」と、小崎正浩(おざきまさひろ)副町長が胸を張る。公有林のない自治体でも木造建築がまねできるようなモデルになることを意識したと言う。

木視率や建築のこだわりを熱く語る副町長!

 図書館でよく見かける蔵書の分類方式も、ここではユニークだ。「すぐに役立つ」本とか「人生をたのしむ」本とか、利用者が興味を引く本を発見しやすいよう、工夫している。

 オープン直前の2016年4月。待望の本格的な図書館の誕生に、ふみの森の前には町の呼び掛けで集まった町民が約350人も並び、本の搬入大作戦が敢行された。バケツリレーのごとく本は隣の人から次の人へ。読みたい本があると思わず手が止まりかけるが、また慌ててリレーに戻る。そんなほっこり記録映像が、今でも入り口の近くでリピート上映されている。

 そんな職員と町民が一体の姿勢は、開館の時だけではない。今でもボランティアグループや茂木高校図書委員などが、読みきかせや書架整理などの手伝いに尽力している。みんなで図書館をつくり上げていて“いいね”! 

 ▼ふみの森もてぎ 午前9時~午後7時(土日祝は6時)、月曜休館(祝日・振休の時は翌日)、真岡線茂木駅から徒歩5分、誰でも利用カード作成可。今月は開館7周年行事も(インスタ参照)。

散歩を終えて

ただ「利用者のために」

 おしゃれさで選んだ3つの図書館。なのに取材してみたら、どこもおしゃれは狙っていませんでした。ただ利用者のことを考えていたら、自然とおしゃれになったのだと。企画意図が外れたと悩む私たちに、ゼミの下村教授は言いました。「それこそが、すてきな発見だよ」。確かに。

 さて、記事も仕上がって、どこの図書館で期末課題をやろうかな!