コンテナに積まれたイチゴが大きさ、形、重さごとに手作業で選別され、次々とパックに収められていく。
11月下旬、真岡市のJAはが野高機能物流センター。県内最大のイチゴの生産量を誇る同JAが、パック詰めを担う施設の一つだ。
この時季、作業の5割前後を占めると言われるパック詰め。コンテナごとセンターへ持ち込めば、負担は大幅に減るため、同JA管内は生産者の4割弱が利用する。ただ人手不足もあり、ピーク時の春先になるにつれ、センターの人手はぎりぎりの状態になる。
生産者が減る中、「いちご王国・栃木」を守り続けるには新品種投入に加え、作業の効率化も不可欠だ。
JA全農とちぎは、同市に青果物広域集出荷センターの整備を進める。はが野など県内5JAからイチゴなどを集め、選果・包装する。体制を集約し多くの量を効率よく出荷するのが狙い。関係者は「農家は生産に注力でき、働き方改革にもつながる」と期待する。
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分業は育苗現場でも始まっている。同市古山でイチゴ農園を営むベリーズバトンは21年、自社で育てた7万本の苗をJA経由で生産者に販売した。需要は増え、今年は20万本を育てた。
育苗は毎年6〜9月に行われる。特に夏場の作業は負担が大きい。同社の新井孝一(あらいこういち)社長(38)の周りでも、それを理由に離農した人がいる。
年間を通じて休みが少ないとされるイチゴ栽培。育苗から解放されれば、体力的にも時間的にも余裕が生まれる。「生産者の負担軽減が産地の維持につながる」。新井社長は確信する。
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機械化の動きも加速している。人工知能(AI)関連のベンチャー企業フォーカス(宇都宮市中央3丁目)は「AIイチゴ自動収穫ロボット」を開発中だ。ハウス内を自走し、搭載カメラを通じて収穫に適したイチゴをAIが判別、茎をカットして収穫する仕組み。
克服すべき課題は残るが、寺澤崇史(てらさわたかし)社長(44)は「人手不足や重労働に悩む生産者の力になりたい」。
福岡県でも、地元企業が開発した収穫ロボットが来春、本格販売される。高設栽培用で1個当たりの作業時間は約10秒。購入しやすいよう価格も200万円に抑えた。他にも産業用ロボット大手の安川電機(北九州市)と同県が、パック詰めの機械化に挑んでいる。
無人のハウスでロボットが収穫し、パック詰め-。そんな光景が近い将来、見られるかもしれない。