県が主催したイチゴのスイーツコンテストの試食審査。「選ばれる栃木のイチゴ」に向けた取り組みが広がっている=11月25日、宇都宮市

 アイデアが詰まった数々のスイーツに、食の専門家が真剣なまなざしで向き合った。11月下旬、県が初めて企画したイチゴのスイーツコンテストが宇都宮市内で開かれていた。

 県の狙いは「選ばれる栃木のイチゴ」。流通拠点の東京・大田市場では20を超える品種がせめぎ合う。その中から選ばれるにはブランド戦略が欠かせない。「スイーツは特に女性への発信力が高い」。審査員の一人は戦術に太鼓判を押す。

 世帯当たりのイチゴの購入量は20年前より4割減ったが、購入額は上昇傾向。価値観や生活様式は確実に変化している。「コンビニで数粒ずつ売る時代が来るかもしれない」。JA関係者はそんな想像を巡らす。

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 焼き菓子にアイス、ジュースにチューハイ…。県産イチゴの加工品は数えきれない。コンビニで目にする機会は増え、人気も高い。

 「さすが栃木やね」。福岡県幹部は以前、本県の駅の土産物売り場に並んだ商品の種類の多さに驚いた。

 そんな福岡県も今や、博多駅はあまおうの商品であふれ「ここまで来たかと感慨深い」と同幹部。シーズンを問わず、名前を売り込める加工品でも、あまおうは存在感を高めてきた。

 人口減の中、両県は国外にも目を向ける。先行するのは福岡県だ。2003年度香港に輸出を開始。20年度の輸出量は377トンを超えた。品質とブランド力、地理的優位性で鮮度も重んじる現地ニーズを捉える。

 対する本県。高級品種「スカイベリー」を中心に輸出してきたが、輸出量は10トンに満たない。そこで投入するのは、果皮が硬めで輸送向きの「とちあいか」。21年度に試験輸出を始め、本年度本格化させる。味や大きさはもちろん、硬めの食感も「好まれる」と関係者は自信を見せる。

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 国内は今、大粒で甘い品種が続々と誕生している。ただ、加工業者の間では従来の「とちおとめ」支持が根強い。代表されるのがケーキ。甘みと酸味を備えたとちおとめは、切り口も鮮やかでクリームにもマッチ。人気を維持する。

 一方、とちあいかは酸味が少なく「切り口も白い。パティシエが白さをアクセントと捉えてくれれば」。大田市場で仲卸を営む星野和一(ほしのわいち)さん(72)は発想の転換を期待する。売り込み方次第で可能性は広がる。

 とちあいかが“主役”となる時代を迎える中、市場ニーズをいかにつかむか、次の一手が注目される。