【佐野】葛生東1丁目の市葛生伝承館で、地域に受け継がれた工芸品の土鈴(どれい)をテーマにした企画展「佐野土鈴展」が開かれている。佐野土鈴の第一人者とされる故相沢市太郎(あいざわいちたろう)さんの作品をはじめ、干支(えと)や地域の名産品などをモチーフにした土鈴が651点並ぶ。展示数は過去最大規模となり、個性豊かでかわいらしい作品を一堂に楽しめる。6月22日まで。
土鈴の歴史は縄文時代までさかのぼる。祭礼用として使われていたと考えられ、魔よけの力があるとされてきた。江戸時代には神社の授与品として配布し、その後は趣味で集める人が増加。昭和時代は観光地の土産として人気を集めてきた。市は「佐野土鈴」と呼ばれた作品を数多く制作した相沢さんら著名な作家を輩出していることから、愛好家の間で「土鈴作りの大家がいるまち」として知られていたという。
相沢さんの作品は独創的な発想やポップな色使いが特徴。鬼や招き猫といったものだけでなく、市文化会館や市郷土博物館、栃木市の「蔵の街」など、建物・景観を模したものもある。土鈴の型は同じでも絵付けは手作業のため、一つ一つ異なる表情を楽しめる。
相沢さんの師匠片柳喜一郎(かたやなぎきいちろう)さんの作品も展示している。代表的なのは「毛野百鈴(けのひゃくれい)」。県南部と群馬県の神社仏閣や名産品をモチーフにしたもので、土鈴収集家などから人気があるという。
他にも多数の土鈴作家の作品を展示しており、それぞれの作風などを比較しながら楽しめる。大小さまざまな土鈴に触れられる体験コーナーも設置してある。同館で展示を担当する中里千尋(なかざとちひろ)さん(46)は「土鈴は西のイメージだが、佐野にも有名な職人がいることをもっと多くの人に知ってほしい」と話した。
午前9時~午後5時。入館無料。月曜休館。(問)同館0283・84・3311。