被災後に改修した子育て支援センター内

 2019年の台風19号による災害発生から、12日で5年が経過する。栃木市泉川町の認定こども園「さくら」では園のすぐ西側を流れる永野川が決壊し、建物の1階部分が浸水。一時は市内の公民館などに場所を移して保育を行った。園内の設備は被災後に一新したが、現在も浸水で残った砂が建物の隙間から出てくることもあるという。発災当時、対応に追われた堀昌浩(ほりまさひろ)園長(53)と共に改めて被害の大きさと教訓を振り返った。

 「見るも無残な状況。建物内の机などの大半が流されていた」。川が決壊した翌朝、堀園長は園内の被害を目の当たりにした。

 同年10月12日夜、強い雨が降り続く中、堀園長を含む職員6人が防水作業をしていた。午後9時ごろ、廊下などへの浸水が進み、敷地内の児童館2階へ避難した。その後、隣接する永野川が決壊し、建物に濁流が押し寄せたとみられる。子ども園や同じ建物内の子育て支援センターなどの1階部分は浸水。人の肩ほどの高さまで水が達した所もあった。机や椅子、子どもたちが描いた絵などの作品も水没した。

 被災後は保護者やボランティアが連日約100人集まり泥出しなどの作業を3週間続けたが、とても保育可能な状況には戻らず、市などの協力を得て公民館に移った。大規模な改修を経て、園舎で保育を再開したのは翌年2月のことだった。子どもたちの思い出の品も洗浄して保護者に返したという。

 甚大な浸水被害を踏まえ、建物内にロフトを作って子どもたちの物を守れるように改修した。決壊場所の真横にあり「地面がえぐられているようだった」という園庭は被災後、強い雨が降ると水はけが悪くなったため、人工芝を整備した。このほか故障した空調など設備や内装の改修は1年以上続いたという。

 堀園長は「災害はどこでも起きる。昔のままの感覚で防災・減災を考えず、先回りの判断で行動するようにしている」と教訓を語った。