8月の栃木県内で、雲と地上の間で放電される「雷撃」の回数が平年値の1・7倍に当たる約2万7千回となり、全国最多だったことが24日までに、各地の雷を観測している民間気象会社「フランクリン・ジャパン」(神奈川県)のまとめで分かった。雷撃や雷が多発した要因について、宇都宮地方気象台は「高温や台風の接近により、暖かく湿った空気が流れ込み積乱雲が発生しやすかった」とする。停電なども昨年より多発した。今年は10月以降も気温が高い見込みで発雷の可能性があり、専門家らは注意を呼びかけている。
同社によると、落雷の際には多数の放電があり、それらを「雷撃」と呼ぶ。同社は各地に設置した31基のセンサーで全国雷観測ネットワークを構築。2000年から観測を始め全国の雷撃数などを観測している。
本県で00~23年の各8月に発生した雷撃の平均回数は約1万6千回。2024年は平均より1万1千回多い2万7千回を記録し、全国で最多だった。埼玉県が約2万4千回で2位、熊本県が約2万1千回で3位と続いた。
同気象台によると、宇都宮では8月、前年同月比2日増の22日間に雷を観測。6日間連続の発雷も2度あった。今年は特に高温が続いたこともあり、「地上と上空の気温差が大きくなればなるほど、大気が不安定になる」と説明する。
雷による被害も多発した。東京電力パワーグリッド栃木総支社によると、県内で8月、雷で3分以上停電した件数は前年同月比44件増の57件。停電の発生日数は11日増の16日だった。NTT東日本によると、栃木支店管内(本県の他、茨城と埼玉両県の一部)で、落雷などの影響による電話やパソコンなどの通信機器・設備の故障申告は500件増の約3100件だった。
気象台によると、雷のシーズンは例年9月ごろまでだが、今年は10月も気温が高い見込みで、雷に注意する必要があるという。
積乱雲のメカニズムに詳しい防衛大学校地球海洋学科の小林文明(こばやしふみあき)教授(62)は「積乱雲が近付いてきたら、早めに頑丈な建物や車の中に避難することが大切」と強調。そうした避難場所がない場合は「電線の真下などが比較的安全。砂浜など開けた場所にいる場合は、耳をふさいで、足をそろえてしゃがむ“雷しゃがみ”が落雷から身を守る基本姿勢になる」と説明した。