各地で記録的な大雨となり100人超の死傷者を出している台風10号の接近に備え県内では30日、被害を防ごうと対応に当たる関係者の姿があった。道路管理者は倒木の恐れのある街路樹を伐採し、梨農家は収穫を急いだ。ここ数日の雨で地盤が緩んでいる場所も多く、不安な気持ちで過ごす住民もいる。台風の影響は週明けまで続く恐れがあり、一部の学校は休校や下校時間の繰り上げを決めた。
30日午前、宇都宮市上欠町の県道で、街路樹など5本の伐採作業が行われた。ヘルメット姿の作業員が、幹がぐらつくなどしていた樹木をチェーンソーで細断しトラックに運び込んだ。
県宇都宮土木事務所保全部保全2課の加藤丈弘(かとうたけひろ)主査(46)は「ここ数日の大雨で幹の重みも増し危険な状態と判断した。引き続き事故の未然防止に努めたい」と気を引き締めた。
同市姿川地区市民センターでは30日までの5日間で、300個近くの土のうを市民に無料で配布した。
農家も対応を急いだ。JAうつのみや梨専門部専門部長の大橋基宏(おおはしもとひろ)さん(49)は同市内の畑で、梨の豊水の収穫を急ピッチで進めた。普段は1日当たり約2千個のところ、この日は約3千個を収穫した。
「熟した実は風で揺れて落ちやすい。『にっこり』などの収穫も控えており、風で実同士がすれて傷にならないか心配」と大橋さん。梨畑を覆う防災用ネットを入念に点検した。
26日未明、豪雨に見舞われた鹿沼市内は30日も一部河川の水位が高い。自宅近くの林道が崩落した同市草久、無職上沢(うえさわ)シズエさん(82)は「風呂の水が出なくなり直してもらっているところ。これ以上の被害が出ないことを願いたい」と不安げな表情を浮かべた。
宇都宮市内のホームセンター「カインズ宇都宮テクノ店」では、台風10号接近の報道が出た先週以降、対策グッズの売り上げが平常時の約1・5倍に伸びた。窓ガラスの飛散防止などに使える養生テープが特に売れている。小川佳彦(おがわよしひこ)店長(45)は台風接近や南海トラフ地震臨時情報の発表などで「防災意識の高まりを感じる」と語った。
学校にも影響が出ている。30日は県立高3校(定時制含む)が休校した。週明けの2日は下野市が小中学校3校を休校する他、野木町が小学校5校の下校時間を繰り上げる予定。