黒田政夫

 あの苦しさは忘れられません。最後となった4年生の箱根駅伝。各校のエースが集まる2区は、今より2キロも長い25・2キロでした。長い歴史の中で、2区では最長だと思います。

 難所といえば15キロ過ぎの権太坂が有名ですが、本当にきつかったのはラスト3キロ。22キロも走った後に上り坂が待っていて、もはや壁のように感じました。右脚、左脚と続けてけいれんしてしまい、立ち止まるしかありませんでした。

 まだ給水が認められていなかった時代です。屈伸運動をして走り直せましたが、たすきを渡せなかったらどうしようと身震いがしました。まだテレビ放送が始まる前でした。今なら間違いなく生中継のカメラに撮られて、お茶の間に流れていたシーンでしょうね。

 雨上がりで突風が吹く悪条件も重なり、全く前に進みませんでした。新聞に「冬の嵐」と書かれたくらいです。結果は区間5位。総合優勝を狙っていた順大にとってはブレーキ。箱根駅伝はどんな駅伝よりも、距離の長さが別格なのだと思い知らされました。

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