ジェンダーバイアス(性別に基づく固定観念)で苦しむのは女性ばかりではない。「男らしさ」にとらわれて生きづらさを感じる男性も少なくない。「国際男性デー」(11月19日)に合わせ、5回にわたって解決策を考えていく。
初回のテーマはメーク。身だしなみやおしゃれの一環として、一般的に「女性がするもの」とされてきた。近年は若者を中心にメークをする男性が増えているが、まだまだ認知されているとはいえず、「周囲の目が気になる」との声も。実際のところどうなのか、記者(29)がメークをして確かめてみた。

協力してくれたのは、東武宇都宮百貨店内の化粧品ブランド「イプサ」。化粧品売り場に足を踏み入れるのも初めてで、緊張感が高まる。「一体自分はどうなってしまうのか」。期待と不安が入り交じる中、肌の状態を測定。水分保持力などが数値で示されると、関心を持ってこなかった自分の肌を「何とかしたい」という思いが芽生えてきた。

化粧のりをよくするためクレンジングなどで汚れを落とし、化粧水や乳液などで肌の状態を整えてもらった。これほど他人に顔を触られることはなかったため少し動揺したが、ファンデーションや白粉(おしろい)を塗ってメークが完成した。

仕上がった顔は血色が良く、別の自分になったかのような高揚感。同時に、「男性も女性も同じ人間なのに、なぜ男性(私)は肌を大切にしてこなかったのだろう」という気持ちにもなった。

その後、自分でもメークを続けてみた。メークをして出社した数日間は、驚くほど人目が気になった。そもそも不慣れなため完成度に自信がなく、気付かれないことに安堵(あんど)していた。マスクにファンデーションが付いていることに驚き、恥ずかしさを感じてしまった。
だが慣れてくると、周囲の目もさほど気にならなくなった。休日は自宅で過ごすことが多かったが、メークをすると積極的に外出しようという気持ちになれた。自己肯定感が高まるなど内面的な変化もあり、さらにメークが上達すればより自信を持てるようになるだろう。少し面倒に感じるときもあるが、続けていきたい。
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下野新聞社は9月下旬~10月上旬に男性メークに関するアンケートを実施。男性はメークをするべきか、肯定派と否定派からさまざまな意見が寄せられた。次回で詳報する。