那須町湯本の朝日岳の登山道付近で男女4人が死亡した遭難事故で、死亡した大阪市、医師の男性(65)と一緒に行動していた大阪府の60代男性が下山後、那須塩原署に対し、「小石が舞うほどの強風で立っていられず、四つんばいになって岩をはうようにして歩いた。ひどく寒かった」などと説明していたことが8日、同署への取材で分かった。4人が死亡した経緯などを調べている。
同署によると、60代男性は最初の通報者で、医師の男性と一緒だった6日午後0時25分ごろ、「2人で登ったが、1人が低体温症で動けない」と110番した。
男性は医師の男性とともに5日、朝日岳の西側にある三斗小屋温泉に宿泊し、6日午前7時ごろに宿を出発した。男性の説明では、午前11時ごろから天候が急変し、雨が降ったりやんだりする中、「小石が飛んで顔に当たるほどの強風」も吹いたという。
その後、医師の男性が低体温症とみられる症状になり、動けなくなった。背負うのは難しく、助けを呼ぶために下山し、携帯電話の電波の届く場所を目指した。途中で男女3人が動けなくなっているのを見つけ声をかけたが、返事は聞こえなかったという。
2人が泊まった三斗小屋温泉の旅館「煙草屋旅館」のオーナー野本芳彰(のもとよしあき)さん(53)によると、2人は宿の北方面の「大峠に行く」と話していたという。「強風の予報が出ていた。やめた方がいいと忠告し、ルートの変更を勧めた」と振り返る。
同じ日に出発した別の3グループは、助言を受けて別のルートに変更し下山したという。「あの時、無理にでもルートを変更してあげていたらよかったかもしれない」と悔やんだ。