下野新聞社が保育園で行った「好きな色選び」などのリサーチの結果からは、園児たちが周囲の影響を受けながらジェンダー観を身に付けていることがうかがえた。われわれ大人たちは「男なんだから泣くな」「女の子はおしとやかに」とステレオタイプの声かけをし、アンコンシャスバイアス(無意識の偏見)を押し付けていないだろうか。リサーチのアドバイザーを務めた足利短期大こども学科の林恵(はやしめぐみ)教授に保育施設や保護者が気を付けるべきことを聞いた。

保育現場は男女平等が大前提。だが林教授によると、不必要に男女別でグループを作ったり、発表会などの役を性別で指定したり、出席を取る時に常に男児を先に呼んだりする幼稚園や保育園が今もある。
「子どもたちに『男女は分けられるもの』といった固定的な意識を植え付けてジェンダーバイアス(性別に基づく偏見)を再生産するだけでなく、子どもたちが自分らしさを表現することをためらうようになり、可能性の芽をつぶしてしまう」
では、どのように対応をすればいいのか。
まず行うことは、従来の対応の点検だ。「ジェンダーバイアスがないか」を見極め、あれば改善する。林教授は「保育者はジェンダーに敏感な視点を持たなければならない」と訴える。そして、「らしさ」を押しつけないこと。「子どもが社会通念とは異なるものを選んだとしても、否定しない。子どもが自由に考えを出し、表現できる環境をつくることが求められる」
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このような視点は保護者にも求められる。林教授は子育てをする上で気に留めておくこととして、(1)性別に関係なく平等な言葉かけをする(2)性別でおもちゃや服装、持ち物を制限しない(3)大人が家事や育児を平等に分担し、子どもにも性別に関係なく料理や掃除などを体験させる(4)性別に関係なく夢や進路を選ぶ支援をする(5)年齢や国籍などが異なる人たちと関わる機会を提供し、ジェンダーバイアスを持つ人がいても自分の信念を持つようにさせる-を挙げる。

林教授は「私たちは育つ環境や経験によって無意識のうちにさまざまな価値観を持ち、物事を評価・判断し、行動している。アンコンシャスバイアスを持っていること自体は悪くないが、バイアスに気付かず周囲に押し付けることが問題。立場の弱い人が不利を受けることが多く、人権を脅かすこともある」と警鐘を鳴らしている。