MEAMの国際コンクールで最優秀賞に輝いた「Grimoire」

潮田和也さん

MEAMの国際コンクールで最優秀賞に輝いた「Grimoire」 潮田和也さん

 【真岡】根本にアトリエを構え、写実画を専門とする潮田和也(うしおだかずや)さん(40)の作品が、スペイン・バルセロナの欧州近代美術館(MEAM)で開かれた国際コンペティション「Figurativas(フィギュラティバス)」絵画部門で最優秀賞に輝いた。最高賞はアジア人、日本人で初めて。「世界で勝負し、賞を取るという目標がかなった」と感激を語る。

 同美術館は、写実絵画の収集で世界的に知られる。世界から具象芸術の最新作品が集まるフィギュラティバスは2006年に始まり、12回目。MEAMによると、今回は数千人が参加した。現代スペイン・リアリズムの巨匠アントニオ・ロペス・ガルシアさんらが絵画部門の審査員を務め、7月に結果が発表された。

 魔術書を意味する潮田さんの作品「Grimoire(グリモア)」はF20号(約73センチ×61センチ)で、女性が画集を開き、長椅子にもたれかかった様子を描いた。文星芸術大大学院時代から研究している「練り込みOGテンペラ」という独特の技法で描いている。

 これまでの作品では描いていなかった背景を入れ、画面の隅から隅まで緻密な描写に特化した。精神性の表現より描写の技術力で勝負した作品ではあるが、結果的に「隠しきれない日本人らしさや神秘性が出たのではないか」とみる。

 潮田さんの作品をたたえるMEAMのブログにも、細部や光、影を正確に捉える筆致や色彩の熟達に加え「日本文化の特徴である静寂や純粋さの感覚」を評価する言葉が並ぶ。

 潮田さんは市出身で益子高(現益子芳星高)から文星芸術大に進んだ。「『自分の力ではここが限界』と思うこともあったが、諦めずに描き続けたから成長できた」と振り返る。清らかで心の安らぎを生む作品を目指し「栃木からでも世界に挑戦し、勝てるという決意を持って頑張りたい」とさらなる意欲を見せる。