鈴木の絵を手に鈴木の思いを語る星野さん

 【栃木】関東大震災から9月1日で100年となるのに合わせ、家族や知人から聞いた関東大震災を話し合う「みんなで知ってみんなで考える おはなしcafe」が30日、市栃木図書館で開かれた。約30人の来場者が当時の教訓に耳を傾けた。

 大震災を実体験で語れる人がほぼいなくなった今、参加者が伝聞や知見を交換、共有して防災につなげようと同館が主催した。

 市出身の版画家鈴木賢二(すずきけんじ)(1906~87年)の四女星野解子(ほしのときこ)さん(77)は、栃木中(現栃木高)3年だった鈴木が上京して被災の様子を描いた水彩画を説明。朝鮮人虐殺などに触れ「生々しい現場で社会に目覚め、生き方を変えたのでは」とプロレタリア美術へ進んだ鈴木の思いを想像した。

 栃木語り部の会代表の間中一代(まなかかずよ)さん(64)は、東京・深川で被災した祖母が「畳に転がりそうなほど家が弾むように揺れた」と話したことを振り返った。一家は舟で避難したが、家財道具を積んでいた前方の舟は橋につっかえて、火の粉で燃えてしまったという。

 両国駅近くの空き地に集まった避難者に多数の被害が出たことも踏まえ「石碑に刻むだけでなく、教訓は言葉とともに語り継いでいかないといけない」と強調した。市内に首都圏から約5千人が避難したことや、市内のボランティアの事例も紹介した。