塚本竜也さん

 NPO法人トチギ環境未来基地では、県内の荒れてしまった里山をボランティアの皆さんと一緒に整備し、豊かな里山を取り戻すための活動を行っています。整備した里山をいかして、子どもたちと自然体験活動も行ってきました。

 今回は「全ての子どもたちに自然体験を届けるために」というテーマを考えていきたいと思います。当法人はちょうど子どもの貧困が大きな社会問題となりはじめた7年前から、宇都宮市にある昭和こども食堂と連携して、「わくわく自然体験サマーキャンプ」を実施してきました。

 きっかけは子ども食堂に通う保護者の一言でした。「夏休みだから子どもをキャンプにでも連れて行ってあげたいけれど、私は毎日仕事があってどこにも連れて行ってあげられないの」。母子家庭で、お母さんは生活を守るために一生懸命仕事をされています。私たちと子ども食堂が協力し、保護者の代わりに子どもたちのキャンプや自然体験の機会をつくっていけたらいい、と考えました。

 「生活がギリギリで余暇活動に使えるお金はうちにはないの」という声もあり、参加費免除の仕組みもつくりました。こうした経験の中で、自然体験活動を企画して待っているだけでは機会を届けることができない子どもたちが多く存在することも痛感しました。

 自然体験活動を専門的に行っている団体も活動を続け、またより良いものに発展させていくためには当然、資金が必要です。これまでは参加費という形で資金を確保してきましたが、参加費を支払うことが難しい家庭が増えている厳しい現実があります。「全ての子どもたちに」を実現するためには越えなければならない壁です。

 そのためには今後もうひとつの新しい道をつくっていく必要があると考えています。未来を担う子どもたちが自然の中ですくすく育ってほしいと願う大人の皆さんもたくさんいらっしゃいます。そうした子どもの応援団からのご支援/寄付を集め、子どもたちに自然体験の機会を届けていくという道です。

 1回の自然体験で子どもの人生が変わることもあります。さらにとびっきりの思い出づくりと、自然っていいな、と思う子どもの気持ちを育むこともできると信じています。このような取り組みをネットワークの仲間と共に実現していきたいと思います。

 (NPO法人トチギ環境未来基地 塚本竜也(つかもとたつや))

略歴

 トチギ環境未来基地理事長。大学では森林資源を専攻。卒業後シアトルの環境NPOで半年間の研修に参加。帰国後、東京のNPOで国際ボランティア活動の企画運営に従事したのち、2009年トチギ環境未来基地を設立。「環境」と「若者」を中心テーマに、様々な活動を展開している。