陳列棚から商品を取り、会計ゾーンに立つだけで自動で商品の明細が表示される。商品をスキャンせずとも、現金や交通系ICカードなどで支払いを済ませられる。
JR山手線高輪ゲートウェイ駅構内にあるガラス張りの無人コンビニ。約600アイテムをそろえる「巨大な自動販売機」といえる。「無人人工知能(AI)決済店舗システム」を用い、多数のカメラやセンサーから取得されるデータを独自のアルゴリズムで解析し、店内にいる客の動きをリアルタイムで捕捉する。
そのシステムの開発を手がけるのがTOUCH TO GO(タッチトゥゴー)だ。同社のトップであり、JR東日本の社員でもある。
■仕組みを社会へ
JR東日本に入社し、鉄道部門には関わらず、駅構内の生活サービス部門などを歩んだ。駅ナカのコンビニ店長をはじめ、JR東グループポイント「JRE POINT」の共通化や、青森県でシードル工房を立ち上げる事業に携わった。
鉄道会社にいながらも幅広い分野を経験し、「人が(バーコードを)スキャンしなくても販売できる仕組みをつくろう」と2017年、社会実装に取り組んだ。
大宮駅や赤羽駅で実証実験を積み、19年7月、ベンチャーキャピタル「JR東日本スタートアップ」(東京都港区)と金融コンサルティング会社「サインポスト」(東京都中央区)が組み、「タッチトゥゴー」を設立した。大手コンビニファミリーマートが資本業務提携し、株主には他に東芝テックやKDDIなども加わった。
「日本の大企業にはアセット(資産)や人材を有するが、うまく活用していない面もある。外へ出して活用した方がいい」との思いから、JR東の経営資源を活用し事業を進める。
■続くレール敷設
無人店舗の導入先は50ほど。市役所やホテル内にもあり、県内では22年12月、宇都宮市の帝京大宇都宮キャンパス内に開業した。
人口減少社会に入り、人手不足が深刻化することを見据え、その解消が図られるシステムを強みにする。
「今後10年で3割ぐらいの人が当たり前に使えるシステムにし、自販機に次ぐ生活インフラにしたい」
公共交通機関という社会資本を支える会社に入社しただけに、AIを最大限活用し、次世代のインフラへ定着させるべく“レールの敷設作業”は続く。
経歴 宇都宮市出身。宇都宮東高、専修大法学部卒。2004年JR東日本入社。18年、JR東日本100%出資のベンチャーキャピタル「JR東日本スタートアップ」の設立に関わり、同社シニアマネージャーの肩書も持つ。19年からタッチトゥゴー社長。都内在住。
企業メモ TOUCH TO GO(タッチトゥゴー) 無人AI決済店舗を展開し、省人化のシステムソリューション開発を手がける。2019年、「サインポスト」とのジョイントベンチャーとして設立。資本金1億円。売上高は非公表。従業員40人。東京都港区高輪2の21の42。
全文1255文字
下野新聞デジタルに会員登録すると…
- 事件事故や高校野球・イベントなど速報でとちぎの「今」が分かる
さらにスタンダードプランなら…
- デジタル有料記事の大半が読める
- 教育や仕事に役立つ情報が充実
愛読者・フルプランなら…
- アプリも使えて、おくやみ情報もいち早く