【真岡】市と市社会福祉協議会、食品スーパーを展開するカスミ(茨城県つくば市)が2022年2月に始めた「移動スーパー」の利用客数が3月末に1万人を超え、4月末で1万1614人に達した。買い物弱者の高齢者の生活を助ける一方、売上高などの目標は未達成。市はルートの見直しなど活性化を図り、事業の安定的な継続に向け利用を呼びかけている。
茨城県筑西市との境、水戸部自治会公民館は利用が伸びている場所の一つだ。近くにスーパーの店舗はない。5月中旬、午前11時半に生鮮食品や加工品、総菜など700品以上を積んだ車両が止まった。
水戸部、無職直井賢一郎(なおいけんいちろう)さん(78)は「近所の十数軒でみんな頼りにしている。来る人は顔なじみだし、安否確認もあるかな」と笑顔を見せた。電動カートで来た別の高齢男性客は、事前注文の分を含め7千円以上を買い込んだ。
事業開始以降、利用客数は月645人~1040人で推移し、平均は774人。同社は売り上げ目標や採算ベースを公表していないが、担当者は「目標の売上高は未達成」とし、市によると、月の利用客数なども大半の月で目指す数字に届いていない。
同社は県内では佐野、鹿沼市、益子、上三川町でも移動スーパーを展開している。真岡市では利用状況や地域の要望を考慮しながら半年ごとにルートの見直しを図ってきた。4月3日にも一部を変えるなど最適なルートを模索し、現在は農村地域の公民館など1日7、8カ所を巡る。
地域貢献的な意味合いもあり、同社から市に提案した事業のため、市としては経費が掛からないこともメリットだ。半面、市社協の担当者は「生活に欠かせない高齢者が確実にいるからこそ、(カスミに)安定的に継続してもらうための一定の売り上げや採算が重要になる」と強調する。
今後、宇都宮市内の店舗から市内の店舗へと移動スーパーの拠点が移る予定で、更なる利便性の向上も期待されている。