栃木県芳賀町祖母井の元県立高校長半田好男(はんだよしお)さん(60)が32年間にわたりネパールの山間部で識字教育などの支援に取り組んでいる。3月には在日ネパール大使館から長年の支援への感謝状が贈られた。内戦や震災、新型コロナウイルス禍など数々の困難に見舞われながらも活動を継続。教職は今春で退職し、「国内で支えてくれる人や現地で動く人がいて成り立つ活動。頑張る人がいる限り自分も続けたい」と気持ちを新たに、今後は両国の人材育成に力を入れる。
半田さんは1991年から2年間、国際協力機構(JICA)青年海外協力隊員として同国で理数科を教えた。当時、学年が上がるにつれ家事や家の仕事に追われ、学校に来る子どもが減ることに気付いた。親の意識を変える必要性を感じ、現地の教員と一緒に女性向けに識字教室を始めた。その後、非政府組織(NGO)「ディーヨ・フォーラム」を設立して学校施設整備などの支援を続けた。
この間、現地の情勢不安で事務所が荒らされるなど活動の継続が危ぶまれる事態もあった。それでも同国東部のトカルパ村を中心に山間部の約10の村で取り組みを展開。2015年のネパール大地震後には食料や毛布を届けるなど、その時々の現地の声に耳を傾けた。コロナ禍で渡航が難しくなると、現地の障害者らが作ったカレンダー販売、奨学金給付など日本から支援を続けた。
JICAの訓練所がある長野県駒ケ根市では、識字教室の開設当初から趣旨に賛同した駒ケ根青年会議所が資金面で協力し、地元の中学生を同国に派遣するなど相互交流も生まれた。半田さんの出身地である佐野市内のボランティア団体などの支えもあった。
退職を機に自費での活動に一区切り着けることも考えたが、現地スタッフの熱意に継続を決意。補助金の活用や製品のフェアトレード認証など持続可能な活動を探る。佐野市と駒ケ根市を足場に人材育成や交流にも力を入れるつもりだ。
今は4年ぶりの渡航を目指している。大使館の感謝状を「支えてくれた方への感謝状でもある」と喜びつつ、「支援しているというのは一方の考えで、相互交流の視点に立つ必要がある」と活動の意義を強調した。