人工知能(AI)搭載の文書編集システムを開発し、ビジネス書類の作成・管理業務に変革をもたらした。
大学3年の時、同年度最年少で司法試験に合格すると、卒業後は「世の中の役に立ち、人に必要とされる仕事をしたい」と、外資系法律事務所で弁護士としてキャリアをスタートした。
企業法務の契約文書作成などを担当したが、その非効率さに首をかしげた。「せっかく専門性を持つ人たちが、非常に単純な作業に時間を費やしていた」と振り返る。「文書作成の効率化」を掲げ、1年で独立、起業した。
■法曹界から転身
2019年、文書をウェブ上で編集・管理するツール「LAWGUE(ローグ)」を発表した。AIが文書をパーツに分解し、体裁や誤字脱字を自動で修正する。過去の文書を検索しやすく、編集の経緯も記録できる。今では関連商品も合わせて計800社以上が、社内規定や投資家向け情報提供(IR)といった文書の作成に導入している。
法曹界からAIの分野に転身したが、「法律事務所にいたのは1年で、違うことを始めたという感覚はなかった」と話す。製品の構想段階で開発担当者などの採用活動を展開し、熱意を語った。「期待感で人を集められる時期だった」。AI開発の機運の高まりも、追い風になった。
試作を無料で試してもらい、顧客のフィードバックを開発に生かした。製品は「10人に1人が熱狂的に求めてくれた」といい、その声に事業の方向性は「間違いない」と確信した。
法律事務所を意識したツールは、法務以外にも活用された。起業時に抱いた「世の中のビジネス文書全般で価値を発揮したい」という願いが実現していった。
■省庁の働き方改革
21年、経済誌フォーブスの「アジアを代表する30歳未満の30人」に選ばれた。同年の国会で省庁の法案にミスが相次ぐと、解決策としてローグが注目を集め、霞が関官僚の働き方改革を進めるデジタル庁の委員にも名を連ねた。
現在は新規事業の開発とともに、ローグの在り方を検討している。「より幅広い文書の課題解決に使ってもらいたい」という思いは変わらない。地方のデジタルトランスフォーメーション(DX)も課題の一つ。高校時代までを過ごし、愛着のある本県の自治体、企業にも「ローグで貢献できたらいい」と語った。
経歴 下野市出身。宇都宮高、東京大法学部卒。外資系法律事務所に就職後、2018年にAutoract(現FRAIM)を設立。21年4月、米経済誌フォーブスの「アジアを代表する30歳未満の30人」に選出された。都内在住。
企業メモ FRAIM 2018年4月設立。資本金1億円。売上高は非公表。従業員約50人。東京都港区南青山2の27の8。