【とちぎ高校野球 読者が選ぶ名勝負】第1位 作新3−2青藍泰斗 九回2死 迷わず二盗

<九回2死 迷わず二盗 練習の自負 逆転劇へ>

 【2013年夏県大会】

 ▽決勝(清原球場)

作新

 000 000 102│3

 002 000 000│2

青藍泰斗

 作新・鈴木は、ベンチ奥の小針監督に視線を送った。「任せる」。手ぶりが示した言葉に、一塁上の3年生は覚悟を決めた。

 「たった数球で結果が変わる高校野球の怖さと、面白さを肌で感じる試合でした」(日光市、山口由樹子さん、44歳)

 七回、八回…。青藍泰斗・沢田の右腕が刻むカウントダウンは、九回2死走者なしまで進んでいた。あと1人。鈴木への3球目は低めに抜けて死球となったが、それでも2死一塁には違いなかった。

 ドラマの幕切れが書き換えられたとするなら、それはきっとこの直後だった。

 次打者・添田への2球目。鈴木が迷いのないスタートで二塁に到達し、一打同点という状況に変わった。沢田の表情がわずかに硬くなり、一塁側ではオレンジ色のメガホンが激しく揺れた。

 添田が次の一球を逃さない。沢田が生命線とするスライダーを左中間へ運ぶ。鈴木が本塁に生還して同点。すぐさま二盗に成功した添田を、続く中村が左前適時打でかえした。

 「最後の最後まで、決して諦めてはいけないことを高校球児から教えてもらった気がします」(鹿沼市、高橋英隆さん、36歳)

 作新は3連覇。夏の甲子園に、県勢で初めて3年連続となる出場を果たした。

 なぜ、あの場面で走れたのか−。鈴木は言う。「負けたらどうしようとは思わなかった。いままで何度も走塁練習はやってきたから」。秋、春と頂点から遠ざかり、チームが泥にまみれて磨いた機動力。その日々への強烈な自負こそが、土俵際で一歩を踏み出す勇気となった。

 「まさかの逆転。試合終了後の青藍チームの表情が忘れられません」(佐野市、森田倫子さん、45歳)

 この夏、沢田は1人で全試合を投げ抜いた。涙をこらえ「『あの負けがあったから』と言えるようになりたい」と前を向いた。そして、23年ぶりの聖地に届かなかった宇賀神監督。老将の止められなかった嗚咽(おえつ)は、人々を引きつけてやまない高校野球の「魔力」を克明に映しだしていた。(終わり)