ミロのビーナス像と「円盤投げ」像を眺める菅谷校長

 【足利】昨年春に旧足利高と統合した旧足利女子高の卒業生が母校に寄贈した「ミロのビーナス」と「円盤投げ」の石こう像2体が宇都宮高に引き取られ、保管・展示されている。旧市民会館跡地に建設中の足利高新校舎に設置場所が確保できないことなどを理由に、2体は当初、統合前に廃棄される方針だった。しかしこれを惜しむ旧足利女子高の教職員らが手を尽くしたことで一転、生徒たちの思い出の品が場所を替え、生き続けることになった。

 ミロのビーナス像は同校の第18回(1966年)卒業生が卒業記念に寄贈したもので、高さは約2メートル。円盤投げ像は第33回(81年)卒業生の寄贈品で、高さは約1・8メートル。いずれも校内に設置されていた。在校生たちにも長く親しまれ、デッサンにも活用されていたという。

 旧足利高との統合が決まったことで、一部の美術品は市立美術館などに寄贈されたが、屋内の卒業記念品などは原則として廃棄されることになった。

 しかし美術の教員らが「石こうの全身像は貴重品であり、卒業生の思いも踏まえると、廃棄はもったいない」と、県高校教育研究会美術工芸部会を通じて引き取ってくれる学校を探した。

 その結果、天井が高い保管場所がある宇都宮高が「生徒の情操教育にも役立つ」(当時の軽部幸治(かるべこうじ)校長)と名乗りを上げ、昨年3月に引き取った。同校の菅谷毅(すがやたけし)校長は「こちらで大事に保管させてもらう。像にゆかりのある卒業生にはぜひ見に来てほしい」と話した。

 旧足利女子高第18回卒業生で、解散した同窓会副会長だった森田浩子(もりたひろこ)さん(75)は「統合前のクラス会で、ビーナス像と一緒にみんなで写真を撮った。廃棄を免れたと聞き、安堵(あんど)している。機会があれば見に行きたい」と話している。