ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で日本代表監督として見事に優勝をつかんだ栗山英樹(くりやまひでき)さんは、実は我らが白鴎大の教授でもある。日本ハムの監督に就任した時から休職中ではあるけれど、学内には今も普通に栗山先生の部屋はあり、時々特別講義にも来てくれる。今回はその授業の様子から、栃木ゴールデンブレーブスのキャンプ地訪問まで、野球一色のお散歩で行こう!(粂川美菜(くめかわみな)、川野辺茜(かわのべあかね)、泉浦光(いずみうらひかる))

「頑張る」約束果たす 心に響いた言葉の数々

栗山先生の特別講義は毎回、学内では来校前から話題性抜群だ。私(泉浦)は1年ちょっと前(2021年12月)に開かれた「人間学」というタイトルの話を聴講し、こんな言葉が心に響いた。
◆「《私が》というのが、主語になり過ぎてることはないですか。趣向を変え、《相手》から自分を見た時に、自分の今やってる事ってどうなんだろう…と少しだけ考えると、何か幅が広がっていく。良い選手には、それが見えている」
私たちも、この連載記事を書く際には「読者の目線で考えろ」とゼミの下村健一(しもむらけんいち)教授によく言われる。自分中心の立場から離れて見ることの大切さを、栗山先生から学んだ。
◆「自分が最初に監督になったときに決めたのは、『圧倒的に、絶対的に、片思いしてやる』ということです。《相手》(選手たち)がどう思うかではなく、《こっち》が相手のために思った事をしっかりやり切ること」
さっきの教えとは真逆のような、強烈な《自分》の思い。この信念が選手たちに届いた結果が優勝につながったんだ、と今になって実感する!

◆「今の社会では、どこの出身だとか、どういう風に何をやってきたかとか、全然関係ないのね。その人が《本気になって勝負》できるのかどうか、という世界。ぜひ夢を持って、自分の人生を頑張ってほしいなと思います」
皆と出身が異なってもチームに加えたヌートバー選手。凡退ばかりしていても本気で勝負させた村上選手。…あの日の授業で僕らに話した通りのことを、栗山先生はWBCで実行してみせてくださった。

―――そして、WBC準決勝前の先月18日。白鴎大卒業式会場の大スクリーンには、まさに今激闘中の栗山先生からの熱いビデオ祝辞が流れた。
◆「私もずっとユニホームを着ていて、教員ではありますがなかなか授業をすることができませんでした。そして、皆さんはコロナの影響でなかなか仲間と一緒に学んだり遊んだりができなかった。ただ、逆に言えばその大変な中で、我慢すること、自分でやらなきゃいけないいろんな学びがあったと思います。そういったこと(我慢や学び)も含めて、白鴎大学卒業生の誇りを持って、これからもぜひ頑張ってください。僕も残り、頑張っていきます!」
この4日後、“残り頑張る”の約束通り、先生は優勝を成し遂げた。今度は、僕らが頑張る番だ。
練習場に熱気と気迫 地域密着、愛されるGB
WBCが一番“上”なら、一番“身近”なプロ野球はBCリーグ。特に、WBC元日本代表の川崎宗則(かわさきむねのり)選手もいる栃木ゴールデンブレーブス(以下「GB」)は、地元として気になる! 先月9日、初めて練習の現場を見に小山運動公園にお散歩して来た。

ちょうどWBCの日本代表初戦が行われたこの日、GBも今シーズン開幕へ向けたキャンプがスタート。気温22度でアップの段階から汗をかいている選手たちは、一人一人が声を出していて熱気がすごい! バッティング練習も気迫満々で、打った後の打球スピード、すんごく速い! あっという間に、柵の前までボールが飛んで行っちゃった。

その様子を、中高年を中心に20~30人ほどのファンの人たちが見守っている。誰か推しの選手がいるというよりは、チーム全体を応援しているという感じ。あ、選手のご両親らしき人の姿も。4年ぶり2度目の優勝に向けて、皆気合十分だ!
練習だけではない。選手たちは、中学校を訪ねての職業講話とか、税務署に委託されての確定申告キャンペーンとか、地域のイベントにも積極的に参加している。(そこにも同行してきたので、詳しくはインスタグラムでチェックを!)

知れば知るほど、栃木密着で愛されているGBは“いいね!”なチームだ。
「家族あっての自分」 取材で見えた母への思い

取材中、葭葉幸二郎(よしばこうじろう)選手が小学校時代の同級生である学生記者の私(粂川)にチラッと語ってくれたエピソードは、印象的だった。不調に悩み、何がダメなのか動画を見て試行錯誤していた時に、野球について全然知らないお母さんがふと言った。「タイミングの取り方、変えた?」。---この一言で、打ち方ではなくタイミングという全く頭になかった思考に入ることができ、成長のきっかけがつかめたのだという。

これって、「相手から自分を見た時どうなんだろう…と考えると幅が広がる」という、あの授業で栗山先生が私たちに教えてくれたことと、なんだか通じてるような気がする! 「家族があっての自分なので、感謝しきれない」という葭葉選手の言葉に、取材の場はとてもほっこりとした雰囲気に包まれた。

寺内崇幸(てらうちたかゆき)監督は、地域とのつながりの強さ、選手の向上心の高さがGBの魅力だと言う。「経験年数が長くチームを引っ張るムードメーカー」の佐々木斗夢(ささきとむ)選手、「他の選手のプレー中ずっと応援していて、何事にも全力」なお笑い芸人のティモンディ高岸宏行(たかぎしひろゆき)選手、…皆が一丸のGBの開幕戦は、今月8日。プレーボールまで、もうすぐだ!
散歩を終えて
リクエストから選択

昨年秋の白鴎祭で、私たちのゼミは投票箱を設置し、来場者の皆さんに散歩の行き先(=取材先)のリクエストを募集しました。多くの回答を頂いた中から今回選ばせていただいたのが、ここ「栃木GB」。まさかWBC優勝と組み合わせた記事になるとは思ってもいませんでした!
これからも時々、ご要望の場所へ散歩に出かけてみようと思います!