小山市神鳥谷(ひととのや)の新市民病院と小山高専は、患者から採取した血液や鼻の粘液など検体を運ぶ搬送ロボットの共同開発を進めている。新型コロナウイルス禍で激増した職員の負担軽減を目指し、1年半ほど前、病院が高専に開発を依頼。プロジェクトが始動した。現在、院内で実証実験を重ねており、夏にも、小山高専製のロボットが院内を自律走行する。
コロナの感染拡大に伴い同病院では、全救急患者のコロナ検査が必須になった。救急外来から離れた臨床検査室との間を職員が往復する回数も飛躍的に増え、ロボットの活用を検討。「アイデア対決・全国高等専門学校ロボットコンテスト」(高専ロボコン)全国優勝など実績のある地元の同校に声をかけた。
同校も社会で役立つ開発を学生に肌で学ばせたいと考えており、思いが一致。今泉文伸(いまいずみふみのぶ)機械工学科准教授ら教員3人と学生が製作に着手した。
開発には、同病院の医師や看護師らも参画。高専側と議論を重ね、患者にぶつからないなど安全性を最優先することにした。
完成に近づきつつある試作機は高さ1.1メートル、60センチ四方のカート型で、2段のラックに検体を載せ、レーザーで障害物を検知しながらゆっくりと移動する。1日に行った実験では、いすなどにぶつかることなく目的地間を自律走行。関係者が手応えを感じ取った。
今後は操作の簡略化など改良を加え、完成を目指す。病院は当面、夜間に活用する予定だ。
完成後も同病院と高専は、エレベーターで他の階にも行けるなど汎用性の高いロボットの開発に向けてコラボを続ける。今泉准教授は「今回の経験は、学生が社会に出たとき必ず役に立つ。モチベーションにもなる」と期待を寄せ、同病院事務部の関彰(せきあきら)副部長も「夢を一緒に追いかけられるのはうれしい」と笑顔を見せた。