昨年秋までご好評いただいていた連載「学生記者が行く 県南いいね散歩」が、帰ってまいりました! 今月からはエリアを全県に拡大し、装いも新たに「栃木いいね散歩」としてまた歩き始めます。第1弾は「県内お湯巡り」。ガイドする学生記者は、県南在住の氏家綾音(うじいえあやね)(以下「氏」)、県央在住の佐藤麗奈(さとうれいな)(以下「佐」)、県北在住の泉浦光(いずみうらひかる)(以下「泉」=今回唯一の男子)。それぞれの地元の鉱泉・銭湯・温泉に、群馬県在住の松島翠(まつしまみどり)(以下「松」)を連れて行きます。さて、県外の若者に気に入られるのはどこのお湯?

 

◆名水を贅沢に使用 福寿荘(佐野)

 「私の案内は最強だよ。自分のバイト先だから!」と氏家が紹介するのは、佐野市の街中から少し離れた場所にある旅館『福寿荘』。

 ここの風呂の最大の売りは、日本名水百選に選ばれた出流原弁天池の湧き水を使っていることだ。旅行客はもちろん、若い女性も日帰り女子会で利用する。

自然に囲まれた旅館「福寿荘」

 氏「さあ、入ろう。名水って言ったら、飲み水か料理に使うイメージでしょ。ほら、この浴槽のお湯全部、名水なんだよ!」

 松「へぇ、贅沢(ぜいたく)。こぢんまりしてるけど、あ~浴槽のヒノキの手触りも柔らかい!」

 氏「でしょ? この水、カルシウム分が多いからお肌にもいいんだって」

 松「大きな窓で、遠くまで見えるのも“いいね”」

澄んだ名水、ヒノキの感触、窓外の空

 女将(おかみ)の小倉正江(おぐらまさえ)さんは、「最終的に大事なのは水」が信念。もちろん、料理にもこの名水を使っている。特に、売店で販売しその場でも食べられる「鯉のあらい」は好評だ。名水でなじませることでクセが無くなり、「こんなにおいしい鯉は初めて」「一度味わったら、ここの鯉しか食べられない」とリピーターになる人も。

 氏「ここが売店だよ。私が小学生の頃からずっとここで食べてるのは、風呂上がりのアツアツいもフライ!」

佐野名物いもフライ

 松「あ、おいしい! 衣はカリカリ、芋はホクホク! 一本でたっぷりなボリュームなのもうれしいね。もうおなかいっぱい~」

 食べて良し、漬かって良し。福寿荘は、訪れた人を温かな風呂とおもてなしの心で出迎える。

 ▼福寿荘 佐野市出流原町2120。北関東道佐野田沼ICより車で10分。月木曜定休。早朝プランなら入浴3時間で2千円~(2日前までに要予約)

 

◆県都で最後の銭湯 宝湯(宇都宮)

 「次は、街のお風呂屋さん。人口51万都市に残る唯一の銭湯だよ!」と、佐藤が松島を連れて来たのは宇都宮市内の『宝湯』。のれんをくぐると--

「30年毎日」の常連さんと談笑する稲垣さん夫妻

 松「わ~、開店直後でもお客さんが続々入ってくる!」

 佐「見て見て! サウナ、水風呂、気泡風呂、座風呂、寝風呂まで! この薬湯は、日替わりでユズやショウガ、ワイン湯なんて変わり種もあるよ」

 松「今日は青紫色のラベンダーだね! 華やかな香りで安らぐ~」

 佐「薬湯は少し熱めだけど、気泡風呂はちょうどいい湯加減で寝ちゃいそう~」

ひんやりとした岩風呂に気泡が立つラベンダー薬湯

 女性常連客「ここは水風呂がいいのよ、もう入った?」

 ならば!サウナで10分間じわじわ汗を流した後に、そろり--。

 松「冷たい! でも20℃弱でキンキンじゃないから、初心者でも入りやすくて“いいね”!」

 ここは、栃木県の銭湯の同業者組合で理事長を務める、稲垣佐一(いながきさいち)さんの直営店。妻の茂子(しげこ)さんと「たった一軒になった銭湯を守っていきたい」思いを胸に、今年で開業40周年を迎えた。

昼間から宝湯へ常連客は足を運ぶ

 男性常連客が私たちに言った。

 「もう30年毎日通ってます、うちの風呂には入らないですよ」

 まさに、市民の“宝”湯だ。

 ▼宝湯 宇都宮市若草1の9の5。「中戸祭」バス停から徒歩5分。午後1時~11時半。毎月10日と20日定休。明日「福祉入浴の日」は、70歳以上が無料。