農林水産省が27日発表した2021年の農業産出額(速報値)で、本県のイチゴは前年比4・2%(10億円)増の248億円となり、2位福岡県の218億円を上回って27年連続の日本一となった。20年は福岡に7億円差に迫られたが、今回は30億円差に引き離し、首位の座を守った。天候不順の影響が少なく、新品種「とちあいか」の本格出荷などで出荷量を伸ばしたことが産出額を押し上げた。
農業産出額は販売価格と生産量を基に算出される。
本県の21年産(20年秋~21年春)の出荷量は2万2900トンで、福岡県の1万5800トンを大きく上回った。加えて本県の22年産(21年秋~22年春)は、「とちおとめ」よりも10アール当たり収量(単収)が3割高いとちあいかの栽培面積が2・7倍の52・2ヘクタール(県調べ)まで増えた。
県農政部によると、21年は台風や猛暑など天候の影響が少なく、出荷量が安定していた。単価も上昇し、産出額増大につながった。
一方、二大産地として競い合う福岡県は、販売単価(JA出荷分)が22年産まで18年連続日本一の「あまおう」を武器に、20年は本県の238億円に対し231億円と差を詰めたが、27年ぶりの首位奪還はならなかった。
栃木県農政部は、21年秋は高温で福岡県産の出荷量が減少したため、相対的に本県産の価値が高まったとみている。
23年産(22年秋~23年春)のとちあいか栽培面積は125・1ヘクタールに拡大し、出荷は順調といい、同部の担当者は「(22年産出額は)300億円近い数字も期待できる」。県は32年の産出額370億円を目標に掲げており、同担当者は「とちあいかの作付けを進め出荷量を増やし、ブランド化を推進していく」と話した。
福岡県の担当者は、産出額が減った理由に生産者の減少を挙げ「(新規就農支援など)生産力の維持をこれまで以上に進めながら、あまおうをしっかり消費者に届けていきたい」とコメントした。
本県の農業産出額全体では6・3%(182億円)減の2693億円だった。肉用牛や鶏卵、ナシなどの果実が増えた一方、需要減に伴い作付面積を抑えたコメの減少などが影響した。