3度目の五輪で2種目に出場する萩野=6月のジャパン・オープン、千葉県内

 2019年3月、無期限の休養が報じられた日。萩野からLINE(ライン)が入った。「近いうちにプールへお伺いしたい」。萩野が高校まで通ったみゆきがはらスイミングスクールの前田覚(まえださとる)コーチは「引退の覚悟を持って来るのでは…」と不安が頭をよぎったという。

 萩野がスクールを訪れたのは4月上旬。丸刈り姿で、金メダリストのオーラは「少し消えていた」。こわばっていた表情は、明るい思い出話をするうちに少しずつ和らいだ。今後についての話の中で「五輪は目指します」とはっきり言った。心の火は消えていなかった。

 休養の3カ月間で多くの人に会い、欧州への一人旅では自分にとことん向き合った。2016年リオデジャネイロ五輪後の5年間の過ごし方は、競技において「最も結果が出るやり方ではない」と分かっている。ただ今年4月の東京五輪選考、日本選手権のスタート台には「納得して立った」。

 休養明けの大会では「順位」や「タイム」についての話が極端に減った。求められて技術論を語ることはあったが、競技者として一番の評価のものさしになるそれよりも、「過程」や「出し切ること」を大事にするようになった。

 悩めるキング・オブ・スイマーがたどり着いた境地で、自らの泳ぎを追求してきた。東京五輪代表に決まってからは「キャリアの最後の方に来ている」と繰り返し、3度目の五輪は集大成の場となる可能性もある。「今の僕の水泳は自分の人生を表したいもの。今ある実力を全て東京五輪で出す」と決意を込めた。

 【プロフィル】はぎの・こうすけ 1994年生まれ。小山市出身。作新学院高-東洋大。ロンドン五輪男子400メートル個人メドレー銅メダル。リオデジャネイロ五輪は同種目で金、200メートル個人メドレー銀、800メートルリレー銅。東京五輪200メートル個人メドレー、800メートルリレー代表。ブリヂストン所属。177センチ、71キロ。26歳。