[PR]下野新聞社クロスメディア局

 「人に歴史あり」-。今、自分史づくりが静かなブームとなっている。生誕から幼少期、甘酸っぱい青春の日々、仕事に燃えた時代、家族とのふれあいを振り返り、一冊にまとめる。自分史講座で学んで原稿を書いた人や、ライターの取材を受けるというかたちで自分史を出す人もいる。新型コロナウイルスの感染拡大防止で自宅にこもる時間が増えている。こうした機会を活用し、自分史づくりにチャレンジしてみてはいかがだろうか。

それぞれの半生をつづった自分史

 「半生を振り返ってみたい」「家族や友人に自分の歩みを残しておきたい」。こんな思いで「自分史」を自費出版したいという人が増えている。

 大田原市佐久山、医師阿部敏夫(あべとしお)さん(91)もその一人だ。昨年7月、これまでの自身の医療への取り組みなどをまとめた自分史「ズボンとベルト」(随想舎)を出版した。

 宇都宮市の出版社「随想舎」の卯木伸男(うきのぶお)社長(62)は15年ほど前から自分史講座を開催。その受講生の自費出版にも協力してきた。阿部さんは、この自分史講座に長年参加していたこともあり、卯木社長の協力でこれまで書きためたエッセーなどをまとめた。

 「地域医療をつないでいくことについて発信したかったという思いが根底にありました。自分のこれまでの歩みを残したいということも動機の一つでした」と阿部さん。

 これから自分史を書いてみたいと考えている人に向けては「印象に残ったことなどを、一つ一つ書き留めておくことが役に立つと思います。自分もそうしたことの積み重ねが一冊の本につながりました」とアドバイスを送る。

 さらに「『ズボンとベルト』では自身の生い立ちなどには触れていなかったので、機会があればそうした部分も含めた半生をつづるような本をもう1冊出したいですね」と意欲的だ。

 取材や聞き書きでの出版も可能だ。元下野新聞記者のフリーライター男性(66)はこれまで「自分史」の取材や原稿作成を5冊手掛けてきた。「自宅にお邪魔してさまざまな体験や苦労話を取材します」という。

 宇都宮市御幸本町の根本常栄(ねもとつねえい)さん(85)はこのライターの取材などで「生きていてよかった我が人生」(下野新聞社)を今年2月に出版した。「下野新聞社の人から、自費出版を支援してくれると聞いて自分史をまとめることにしました。水戸から裸一貫で宇都宮に出てきた私でも辛抱強く生きていれば、報われるということを訴えたかったのです」と執筆のきっかけを語る。出来上がった本は同級生や趣味の仲間たちに配布。「作って良かったと思っています。今も読むと昔の思い出がよみがえってきます」と喜んでいる。

 

資料編も充実

下野新聞社が発刊した「マイヒストリーブック」の表紙

「自分史を出したい」。こんな思いを抱いている人にとって、自分史の基礎資料づくりに役立つのが、下野新聞社が発刊した「マイヒストリーブック」だ。誕生から現在までの記録帳などのほか、記録を書き込む時に役立つ資料編もあり、栃木県の昭和平成年表、物価スライド表などの情報も掲載されている。(160頁、1200円税別)

詳しくはこちら

 

 

伝えたいテーマ探して

随想舎 卯木社長に聞く

 自分史制作に必要な準備は何か。そして、どのような過程を経て一冊の本となるのか。卯木社長にポイントを聞いた。

   ◇    ◇

 

 -自分史づくりに着手する前に、準備しておくとよいものはありますか。

 「まず必要なものは自身の年表や履歴書のようなものですね。生まれたときまでさかのぼり、印象に残っていることを書いていきます。臆測で書かず、なるべく正確に書くことも大切です。生い立ちのことなどが分からなければ、兄姉や親戚に聞くのもいいと思います」

 -資料がそろったら、次に取り組むことは何でしょうか。

 「自分史を通じて伝えたいテーマを探すことと、各エピソードの中から書きたいこと、書けることを選択する作業になります。生まれてから今までをすべて書かなくても、面白いエピソードを中心に、こぼれ話などを交えても立派な自分史になります。阿部さんの本もこのスタイルですね」

 -編集者として、どのようなお手伝いをするのですか。

 「本人に書いてもらった文章を、本の原稿として成立させることが私の仕事です。まずは誤字脱字のチェック。また思い入れは分かるが構成が不十分なケースもあるので、第三者に筆者の意図が伝わる文章にするためのアドバイスをします。最初の打ち合わせから本となるまで、1年くらいはかかりますね」

 -自分史づくりの意義として、どのようなものがあると考えますか。

 「人生80年、90年といわれる中、自分が生きてきた道を振り返りまとめる。そして子や孫、多くの人に読んでもらいたいということが一番だと思います。自分史をつくることで、結果として今の自分を再認識することにもつながっているのではないでしょうか」