今井屋製菓で販売しているとて焼き

 旬のフルーツやまんじゅうなどバラエティーに富んだ具材と、それを包む上品な甘さの分厚い生地。先月中旬、福岡出身の記者は初めて塩原温泉街のご当地グルメ「とて焼き」を食べ、とりこになった。どのように誕生したのか。発案者である今井屋製菓(那須塩原市塩原)の塩田和正(しおたかずまさ)さん(55)に話を聞いた。

 とて焼きが誕生したのは2011年。東日本大震災の影響で観光客が大きく減少したことがきっかけという。新しいご当地グルメを作ることで観光客を呼び戻そうと、塩田さんが同温泉街にある2軒の和菓子屋に呼びかけ、開発を始めた。

 「毎週集まってアイデアを出し合いながら、少しずつ形にしていった」と塩田さん。温泉街を歩く人を増やすために、食べ歩きできる商品や地元の人も食べたくなることなどをコンセプトに開発を進め、6月中旬に試作品を完成させた。

 名称は温泉街を運行していたトテ馬車から。クレープに似た形状は、馬車で使われていたラッパ型のクラクションを参考にしたという。

 特徴的な、あの分厚い生地はどうやって生まれたのか。塩田さんは「大学時代のパン工場でのアルバイトから着想を得た」と話す。当初はどら焼きのレシピを基に試作していたが、焼いた生地を丸める時にどうしても割れてしまっていた。

 別の方法を模索していた際、バナナや生クリームをスポンジ生地で包んだ商品をパン工場で製造していたことを思い出したという。スポンジ生地のレシピにアレンジを加え、現在の生地が生まれた。

 現在、同温泉街にはとて焼きを販売する店が11店舗あり、具材も甘いものだけでなく、すしやつくね焼きと多彩だ。「塩原温泉の武器として、今後も販売が続いていってほしい」と塩田さん。塩原を訪れた時はぜひ食べてみてはいかがだろうか。