【大田原】生活困窮者に食料品などを無償提供するフードバンク県北(新富町2丁目)が、昨年に引き続き配布用のコメ不足にあえいでいる。米価高騰などのあおりを受けて“善意のコメ”が激減する一方、物価高の影響により相談件数は急増。担当者は「昨年より厳しい状況。このままでは2カ月持たない」と悲鳴を上げている。
同フードバンクの支援エリアは大田原、那須塩原、矢板、那須、那珂川の5市町。例年、新米のシーズンになると農家などから古米が寄せられるが、16日時点でコメの寄贈は1件もない。現在、倉庫には30キロ米袋が30~35袋あるがほとんどは昨年に寄贈されたコメで、これらも12月には枯渇する見通しだ。
担当の実寿夫(みのるとしお)さん(77)は米価高騰などが影響していると推測し、「今まで寄贈してくれていた米屋や農家も『昨年のコメすらない』といった具合。コメ争奪戦のしわ寄せを受けている」と嘆く。1世帯当たりの配布量(5キロ)を減らすことも検討しているという。
頼みの綱となる政府備蓄米の無償交付も、流通の停滞などにより遅延している状況だ。同フードバンクは6月に、大田原市に割り当てる600キロ分を申請。通常は約2カ月で届くが、9月中旬を過ぎても届いていない。関東農政局の担当者は「他の備蓄米と同様、業者の出庫作業が追いついていない」と説明する。
物価高を背景に、同フードバンクへの相談件数は増加している。1カ月当たりの件数は約100件に上り、昨年比で約30件増えた。相談者は1人暮らしの高齢者やシングルマザーなどさまざま。各市町の担当課や社会福祉協議会からの問い合わせも多く、相談が初回の人も増えたという。
実さんは「日本人の主食だからコメだけはなんとかしてあげたい。保冷庫などで管理されていれば、古米でも古古米でも寄贈してくれるとありがたい」と呼びかけている。
(問)フードバンク県北0287・48・6000。