【小山】人が集いにぎわいのある街づくりにつなげようと、市地域おこし協力隊員の横山賢(よこやまけん)さん(41)と木型職人の和久井政昭(わくいまさあき)さん(56)=黒本=が中心となり、市中心部でベンチの新装や増設を進めている。きっかけとなったのはごみ拾い活動。和久井さんは「人脈が広がり仕事の好転にもつながった。落ちていたのはごみではなく夢と希望だった」と語り、街づくりへの意欲をさらに高めている。
横山さんは「きれいな街には夢がある。大好きな小山を誇れる街にしたい」と市民有志と市中心部で美化活動を展開。昨年、その一環として「24時間ごみ拾い」を行った際、中央町3丁目の常光寺の向かい側にある円形ベンチの木製座面が朽ちているのに気付いた。
そこで活動を共にする和久井さんと協力。和久井さんの工房で木製の座面を新たに作り上げ、先月中旬に小山高専生らと共に設置作業を完了した。これに続いて先月下旬には、小山御殿広場に座面幅1~2メートルのベンチ12基を新設した。いずれも城山公園整備に伴う間伐材を活用し、市の許可を得て設置した。
和久井さんの職人技は、横山さんが取り組む「空き家再生とアートによるまちづくり」にも生かされている。和久井さんは主に鋳造用の木型製作を手がけているが、近年は3Dプリンターの普及などで注文が減り「何か新しいことをしよう」と3年ほど前、ごみ拾い活動に加わった。そこで親しくなった横山さんが、額装など美術関連の木工製品製作を依頼。精度の高さや独創性が評判となり、作家などから注文が相次ぐようになった。
一方、協力隊の活動にも追い風が吹いている。市景観賞まちづくり活動部門で奨励賞を受賞。3月に表彰式と共に行われた記念講演会で識者から、リノベーションやベンチの集中的設置が景観向上に有効だとの提案があった。横山さんは「街がきれいになればごみを捨てる人はいなくなる。和久井さんと協力しておしゃれなベンチを増やし、歩いて気持ち良い街づくりをさらに進めたい」と力を込めた。